■極付印度伝マハーバーラタ戦記

■脚本:青木豪,演出:宮城聰,出演:尾上菊之助,尾上松也,中村時蔵,中村七之助ほか
■歌舞伎座,2017.10.1-25
■漫画や童話も悪くはないが、インドの壮大な物語は新作歌舞伎にバッチリ合うはずである。 ということで急遽チケットを購入した。
神々の子供を人間が生む神婚説話は多々あるがこの作品も半神半人が活躍する。 軍神帝釈天から生まれたアルジュラ(阿龍樹雷)と太陽神の子カルナ(迦楼奈)の戦争と平和を描く物語である。 好戦のアルジェラと非戦のカルナというところか。 しかし二人の立場は微妙に変化していく。 この変化こそが現代政治を思い返す要になる。 大詰で二人は道を踏み外し戦争になってしまうが最後には平和への道を探し出す。 これをみて神々は地上の支配を人間に任せようとする。
舞台美術や衣装はインド風、演奏にはパーカッションを取り入れているが日本の伝統衣装や音楽と巧く融合している。 「ベン・ハー」もどきの戦車も登場するが歌舞伎は何を取り込んでも消化できるらしい。 もちろん関係者にパワーがないと出来ないが。
三幕物だが多くの場では修飾や寄り道が満載なので飽きさせない。 特に二幕はドルハタビ姫の婿選び、ユリシュラ王子のサイコロ賭博、魔物シキンビの登場など遊び心が一杯だ。 カルナが手に入れた最強武器シャクティは核兵器のようなものかもしれないと考えてしまった。 後で使う場面があったが「スター・ウォーズ」のライトセーバーだった!?
神々の登場で始まり退出で終わる世界三大叙事詩の豊かさが溢れている舞台である。 そして裏には観客に現代政治を考え続けさせる厳しさも持っていた。
*2017年第72回文化庁芸術祭参加公演
*日印友好交流年記念
*作品サイト、http://www.kabuki-bito.jp/mahabharata/