■丹下左膳-百万両の夢枕-

■作:趙博,演出:金守珍,劇団:新宿梁山泊
■東京芸術劇場・シアターウエスト,2015.3.15-29
■この劇場はいつもレトロな雰囲気を感じさせてくれる。 イーストとは違う何かがある。 これに沿った作品しか観ないからかな? 席数が微妙に影響しているのかもしれない。
幕開はポツダム宣言受諾直前の御前会議のようだ。 スメロギから天皇制にも話が及ぶ。 そして場面は発電所事故が起こった現代の町へ・・。 そこでは事故に群がる利権屋と職を求める人々が蠢いている。 事故を隠蔽したい国家と利権が結びつき異様な世界が出現する。
この風景を描くことができる数少ない劇団である。 しかし20世紀と21世紀の決定的看板「ARBEIT MACHT FREI」「原子力エネルギの明るい未来・・」を二つも掲げられてしまうと逆に舞台をFREIに飛び回れない。
丹下左膳はこの隠蔽手段としての現地映画撮影に登場する俳優らしい。 しかも行商人の売る飴を舐めると夢で左膳と出会うことができる。 唐十郎的世界で楽しい。 最後に左膳は利権屋のボスを倒すのだが、前後を省略した流れにみえた。 「核々、死か慈か」という歌と踊りで幕が下りる。
趙博の政治世界を金守珍の演劇世界にソフトランディングさせたような舞台である。 二人の拮抗が随所にみられる。  梁山泊のいつもの面白さは見えない。 作者趙博の厳しさが出ているからだろう。
*劇団サイト、http://www5a.biglobe.ne.jp/~s-ryo/works_tange.html