■みんな我が子
■作:アーサー・ミラー,演出:イヴォ・ヴァン・ホーヴェ,出演:ブライアン・クランストン,マリアンヌ・ジャン=パブティスト,パーパ・エッシードゥ他
■TOHOシネマズ日比谷,2026.6.19-(イギリス,2026年収録)
■舞台に入り込めなかった。 その理由は、演出が物語の具体性を意図的に削ぎ落としていたからだと思う。 大木だけがそびえる舞台装置、その背後に浮かぶ月のような円形の窓は、どこか 「ゴドーを待ちながら」 を思わせる抽象性を帯びている。 だが、その抽象性が ジョー・ケラー家の物語 を立ち上がらせる方向には働いていない。
人物描写も分かり難い。 喜怒哀楽の演技は程ほどに有るがどこか抽象気味で謎を持つ。 隣人やディーバー家との関係も、イメージとして自然と湧き起ってこない。
そのため、舞台はほとんど 科白だけで駆動する世界 となる。 科白に集中し、自分の持つ知識を総動員して補おうとするが、ひとつ聴き逃すと途端に理解の糸が切れてしまう。 初見の観客ならなおさら 珍紛漢紛 だろう。 何度も観ている私でさえ、今回は戸惑いを覚えた。
戦中・戦後という時代背景は、すでに観客の共有する「現在のリアリティ」から遠ざかっている。 イヴォ・ヴァン・ホーヴェは、ミラーの戯曲を20世紀の神話=ギリシャ悲劇 として再構築しようとしたのだろう。 しかし、その抽象化は、物語の土台となる社会的・歴史的具体性を薄め、結果として作品の核心に触れにくくしてしまったように感じた。
*NTLナショナルシアターライブ2026作品
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