■ロボット、私の永遠の愛
■演出・振付・テキスト:伊藤郁女
■新国立劇場・小劇場,2025.12.5-7
■舞台上には6m四方の仮舞台が設けられ、そこに大小五つの四角い穴が開いている。 出演者はその穴から出入りし、道具類もそこから出し入れされる。
伊藤郁女による独舞である。 ピアノ演奏などを背景に、2016年初頭からの彼女の日記と思われる言葉が読み上げられる。 耳を傾けると、公演のための移動に追われる多忙な日々がみえてくる。 「休むことができない」。 空港や機内、タクシーやホテルでの遣り取り、両親との会話、子供の教育などが次々と語られていく。 「なにも無い時間が欲しい」と切実な声が響く。
伊藤はロボットのような振付で踊る。 コルセットの一部を顔や肩、腕や足に付けたり外したりしながら舞う姿はまるでロボットのようだ。 忙しく働くからロボットなのか、働き過ぎてロボットになってしまったのか、その両方が重なってみえる。 彼女はロボットの意志を受け入れ、自らロボットであることを選んだのではないか? タフな精神力を感じさせる踊りに、そう思わずにはいられない。 タイトルからもその印象が強まる。
「孤独について、死についてどう思うか?」。 途中、観客に重い問いを投げかける場面があった。 突飛な問いに一瞬戸惑ったが、それはロボットとの関連ではなく、彼女自身の日常から生まれた問いなのだろう。 観客の幾人かが柔軟に答え、その交流のなかで彼女はロボット的存在から抜け出していったように見えた。
60分という短い上演だが、 減り張りの効いた振付を十分に楽しめた。 師走を迎える前に心の燃料を補給できたような気持ちになった。
*NNTTダンス2025シーズン作品
*「ブログ検索🔍」に入れる語句は、伊藤郁女 ・・検索結果は3舞台.