■養生
■作・演出・美術:池田亮,出演:本橋龍,黒澤多生,丙次,劇団:ゆうめい
■神奈川芸術劇場・大ホール,2025.12.19-28
■美大生である主人公がアルバイトや就職を通して経験した社会の現実を舞台に乗せ、現代の若者が抱える生活の一面を鮮やかに描いていた。 誇張された場面もあったが、全体として楽しんで観ることができた。
前半は登場人物3人によるコントのような掛け合いが続く。 やや単調に感じ始めた頃、同期が著名作家になったことへの社会的批判が語られ、そこから舞台はコント的な軽さを抜け出し、本格的な芝居へと転じていった。
私自身、美術には多少の興味があるものの、美大生の就職について深く考えたことがなかった。 美術作品は主観や嗜好に左右されるため、一般の商品と違って評価が一定しない。 劇中でも、主人公が良かれと思って製作した作品が教授には不評で、美大生が<自信>を持ちにくい状況が描かれていた。 就職してからも揺れ動く評価と自信の間で疲労していく姿に、彼らが背負う重荷を強く感じさせた。
演出家の挨拶文には「・・忘れられずにある「否定されたもの」をもう一度肯定するために「養生」を上演する」と記されている。 終幕で、主人公は仕事の納期を守れなかったにもかかわらず、同僚を庇う行動を選ぶ。 彼は何を肯定したのだろうか? 私には、それが人間関係そのものの肯定に至ったように見えた。 社会に根強く存在する芸術作品の評価システムを舞台上で覆すことは難しいかもしれないが、その中で人がどう生きるかを問いかける作品だったように思う。
*ゆうめい10周年全国ツァー公演
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