■スリー・キングダムス
■作:サイモン・スティーヴンス,翻訳:小田島創志,演出:上村聡史,出演:伊礼彼方,音月桂,夏子ほか
■新国立劇場・中劇場,2025.12.2-14
■劇場に入ると空席が目立ち、客席はおおよそ半分しか席が埋まっていなかった。 もともと締まりのない劇場空間のため、空席があるとさらに密度の薄い印象を受ける。 スタッフもその点を意識したのか、舞台の四方に壁を設けて観客の集中を高めようとしていた。
物語は殺人事件を捜査する刑事が主人公らしい。 結末は知らない方が面白いと考えて事前情報はあえて集めずに観劇した。
しかし予想以上に登場人物が多く、細部を把握するのが厄介だった。 それ以上に印象的だったのは科白の「ブロークン」な言葉使いである。 やたら<クソ>を付けて強調する。 「クソつまらない」「クソやかましい」など。 さらに<匂>への言及も多い。 「サクランボのスムージーの匂が・・」「体臭が・・」「ソーセージパイの・・」と言った具合だ。 ビートルズの話題も煩雑に登場する。 英語・ドイツ語・エストニア語を通訳者を介して繰り返す遣り取りは、すべて日本語だが、どこか新鮮! こうした言葉や文化の背後では、ソビエト時代から続くヨーロッパの緯度格差が性産業へ向かう姿として生々しく描かれていく。
この作品は芝居より映画が映えるのではないだろうか? 監督ならデイヴィット・リンチ系がふさわしい。 実際、チラシにも「インランド・エンパイア」に影響を受けたと記されていた。 さらにストーリー展開からアラン・パーカー監督の「エンゼル・ハート」も思い起こす。 闇世界への儀式も描かれているからだ。
作品には多くの要素が詰め込まれており、舞台はそれらを提示していたが、観客としては入口で立ち止まっているような感覚が残った。 そのため、善悪の溶解から主人公ストーン刑事が拳銃で自殺する結末も納得できない。 面白さはあるものの、どこか半煮えのような観後感が残った。 上演時間3時間の中での選択と集中がより必要ではないだろうか。
*NNTTドラマ2025シーズン作品
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