■能楽堂十一月「饅頭」「俊寛」

*国立能楽堂十一月定例公演□の2舞台を観る.
□狂言・大蔵流・饅頭■出演:山本則秀,山本則孝
□能・観世流・俊寛■出演:観世清和,林喜右衛門,井上裕之真,宝生常三ほか
■国立能楽堂,2025.11.5
■「饅頭(まんじゅう)」は客の要請に応じて饅頭売りが自ら商品である饅頭を食べてしまう話である。 しかし客は代金を支払わない。 商いの仕組みが崩れる瞬間を描いており、饅頭売りの複雑な無念さが伝わってくる。 他狂言とは一味違い、商売について考えさせられた。
「俊寛(しゅんかん)」はいつのまにか知っていた物語の一つである。 おそらく小説や映画などから得た知識だろう。 シテ役の観世清和は剛直な俊寛を力強く演じていた。 船が離れていく別れの場面でも、感情より理性が勝っているようにみえた。 このような俊寛像も能の舞台に相応しいのだと納得した。
シテ面は「俊寛(日永作)」。 遥か彼方に消えていく船をじっと見つめているような面だ。 なぜこの作品に専用の面があるのか、その理由が少し分かった気がした。 どのような俊寛を演じても面に向かって収束していくからだ。