■シッダールタ
■原作:ヘルマン・ヘッセ,作:長田育恵,演出:白井晃,音楽:三宅純,出演:草彅剛,杉野遥亮,瀧内公美ほか
■世田谷パブリックシアター,2025.11.15-12.27
■白井晃と草彅剛の名前に惹かれてチケットを購入した。 過去に二人が関わった舞台が面白かったからだ。 劇場に入ると、客席の8割が20代から40代の女性で占められている。 贔屓筋だろうか?
幕が開いて、舞台装置に目をやると、フライパンを半分に切ったような構造が目を引く。 周囲の急な坂(壁)を演者が滑り落ち、中央の平らな舞台で演技をする。 その坂には映像も投影され、視覚的な効果が印象的だ。
・・物語は古代インド、一人の青年が放浪の旅をする話である。 「自我の解放」「輪廻転生からの解脱」「涅槃への到達」、テーマは多義にわたる。 終幕では河の畔に辿り着き、そこで無我らしき境地に至る・・。
仏教的な内容だが、科白はこなれていて分かり易く、リズムもあり、役者の声がすんなりと耳に入ってきた。 まとまっていたが、展開が速く早回しで観ている感じも否めない。
ヘッセについては詳しく知らなかったので、帰りにプログラムを購入する。 解説によれば、この作品はヘッセ自身の精神的彷徨の集大成だという。
舞台装置を演出家は「思考の穴ぼこ」と呼び「その穴に他者や社会が流れ込み、この世界にどう生きるかを問う」と語っている。 演出家自身もこの構造が気に入っているようだ。
また主人公がゴータマ・ブッダの教団に入らなかった理由について作者・長田育恵が書いている。 自我が肥大化するのを恐れたらしい。 現代社会でも教団が敬遠されがちなことと重なるのかもしれない。
今日の舞台を観て、自身の人生を見つめ直すきっかけにするのもよいだろう。 ただ、内容としては当たり障りのない印象も残った。 <教養小説>ならぬ<教養演劇>と呼ぶのに相応しい舞台だった。
*「ブログ検索🔍」に入れる語句は、白井晃 ・・検索結果は21舞台.