■慕情の部屋

■作・演出:中村匡克,出演:桝井賢斗,川西佑佳ほか,劇団:スポンジ
■下北沢駅前劇場,2018.7.11-15
■主人公の青年が女に騙される話である。 女は青年に近づく。 女は夫からDVも受けているらしい。 女を好きになった青年は何とかしなきゃと思う。 そして青年は女の夫を殺害する・・。
青年は刑務所で振り返る。 彼女がDVの傷跡を見せてくれなかったこと、寝室に鍵が掛かっていなかったこと、彼女が殺害前に夫に保険をかけたこと、刺したナイフの傷は浅かったこと、・・。 カットバック技法で過去が甦ってくる。 
主人公の真摯な行動が誤解される話の多い演出家だ。 真っ当な行動を社会は無視するので主人公が苦しむパターンだ。
でも今回は違う。 殺人を犯したのは確かなようだ。 しかも主人公に苦しみがみえない。 青年にはすべてが謎としてやってくるからである。 青年は若すぎる。 これで苦しみより先に謎が来てしまった。 
青年にはもっと苦しみぬいて欲しいところだ。 でも謎をより熟成させても面白いかもしれない。 しかし女の心は読めない。 謎以前だ。 これで作品はどうにも動けない。 どっちつかずで中途半端の感があった。 舞台美術の場面転換は良かった。
映画の話に逸れるが・・、科白に幾度もゴダールの名が聞こえた。 しかし青年はゴダールについて一言も喋ってくれない。 舞台の流れとゴダールの作品を当て嵌めようとしたが上手くいかなかった。 「トイ・ストーリー3」は観ていない。 「慕情・・」も映画タイトルを真似ているが舞台と結び付けられなかった。 振り出しに戻るが、青年がタクシーに乗って殺しに行く背景にクレジットタイトル映像が流れる。 この場面はどの映画作品を真似ているのか?謎解きのようにみえてしまった。 映画の話題は多かったが結局は舞台との因果関係は無いのだろう。
*CoRichサイト、https://stage.corich.jp/stage/92821
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