■ヘッダ・ガーブレル

■作:ヘンリック・イプセン,演出:イヴォ・ヴァン・ホーヴェ,出演:ルース・ウィルソン,レイフ・スポール
■TOHOシネマズ六本木ヒルズ,2017.12.1-7(NT,2017年収録)
■舞台美術がとてもいい。 白壁でほとんど何もない立方空間、壊れたようなピアノ、遮光カーテンから漏れる光、壁に埋め込まれたピストル、ヘッダが投げ捨てた花の散る床、焚火のような暖炉で燃えるアイレルトの原稿、・・。 ヘッダの心模様一つ一つが写像表現されている。
この作品もそうだが背景を現代にすることが多い。 インタビューで演出家は「言葉の裏の意味を探らない」、ヘッダ役ルース・ウィルソンは「エネルギーを内側に溜めない」と言っていたが、それを見越して現代社会はヘッダやテスマンの性格や生き方を分散させてしまったようだ。 でも乾いた孤独感が出ていてメロドラマ一歩手前で留まっている面白さがある。 イプセンを乾燥機にかけたような観後感だ。
そして暖炉の火と共に照明の色合い、ヘッダの衣装や化粧・髪型からバルテュスの室内画の女性たちを連想してしまう。 ところでテスマンが焼蕎麦?を食べる場面がある。 箸の使い方が鈍いので口に持っていく量加減ができていない。 食事はいつも気になる。 下手な食べ方は現実に引き戻される。
*NTLナショナル・シアター・ライヴ作品
*映画com、https://eiga.com/movie/86635/