■管理人

■作:ハロルド・ピンター,翻訳:徐賀世子,演出:森新太郎,出演:溝端淳平,忍成修吾,温水洋一
■シアタートラム,2017.11.26-12.17
■粗筋も読まないで行くとドキドキする。 7月に観た「怒りをこめてふり返れ」(新国立劇場)と同じ遠近ある舞台だから奥窓に立つ兄アストンが大男にみえる。 少し勾配があるから役者は大変かもね。
次々にやってくる謎は深まっていかない。 アストンは統合失調症だから、多分・・。 作品がつくられた20世紀途中は精神疾患と文学は蜜月の関係だった。 でも21世紀のいま疾病世界は科学の下に晒され謎は遠のいてしまったの。 ガラクタを処分できないのもゴミ屋敷や強迫性障害のことが脳裏に浮かんでしまう。
老人デーヴィスだけが本物の人間にみえる。 弟ミックは既にアンドロイドかもしれない。 室内装飾を語る派手だけど表面的な知識、手足の仕草、目の据わり具合からね。 兄アストンもアンドロイド化しようとしている。 小走りに動き回る姿をみると手遅れだと分かる。
アンドロイドは人間が作り人間に近づいていくものだと思っていたけどそれは違う。 人間がアンドロイドに近づいていくのよ。 未来、ヒトはアンドロイドになる! ハロルド・ピンターはそれを無意識に知っていた。 精神疾患が先ずはその入口だと気付いたの。 先日観た「誰もいない国」のハーストとスプーナーの認知症的行動も同じはずよ。
三人の役者はなかなかネ。 老人デーヴィスのホームレスはホンモノだわ。 粘り強く意見を言うところは英国仕込み。 そして演出家はピンターの核心にまた一歩近づいた。
*劇場サイト、https://setagaya-pt.jp/performances/201711kanrinin.html