■北国の春  ■サド侯爵夫人(第二幕)

■吉祥寺シアター,2017.12.15-24
■北国の春
■原作:鹿沢信夫,演出:鈴木忠志,出演:SCOT
■ひきこもりの話のようだ。 ネットワーク時代のなか情報過多で疲労してしまうとどこにも逃げらない。 主人公大介もこれに飲み込まれ頭の中では妄想の宴会が続いている。 大介の身体に他者が侵入してくるのだ。 そして大介の両親がチンドン屋で登場し「北国の春」を演奏し歌う。 しかし息子を助けることは最早できない。
両親と4人の脳内他者が登場し大介と緊張感溢れる遣り取りをするが、母子と家族関係・仕事に結婚問題など切実なテーマが次々と浮かび漂って集中できない。 「北国の春」も大介に届いていない。 役者たちの力強い様式を持つ動きと声が印象に残った。
*2018.10.20追記. この作品は「家庭の医学」を基にしているとある雑誌に書いてあった。 雑誌名は忘れたが管孝行の記事だったはず(?)。 調べたら1979年12月に新宿ディスコ・フルハウスでこれを観ている。 とても感動したことが甦ってきた。 主人公十川念(?)が頭を抱えてのたうち回る場面も眼に浮かぶ。 1980年に入ると池袋アトリエの作品は駄作が多い。 利賀山房に力を入れた為かもしれない。 山房公演「宴の夜」の連続4作品は観ていないが「家庭の医学」は東京公演での1970年代最後の傑作だとおもう。
■サド侯爵夫人(第二幕)
■作:三島由紀夫,演出:鈴木忠志,出演:SCOT
■「北国の春」終演後90分の休息を挟んでの上演である。 科白がビシビシと脳味噌を叩く。 声は役者の口からではなく全身から発せられ観客の耳だけではなく全身に伝わってくる。 それにしても変わった構造を持つ台詞だ。
姉ルネと妹アンヌの対話で始まり、その母モントルイユ夫人を入れての鼎話、次にサン・フォン伯爵夫人の登場と激白、妹と伯爵夫人の退場、そして母と姉ルネとの厳しい遣り取りで幕が閉じる。 母とルネが後半ハイテンションになってしまった。 ここはもう少し抑えてもよい。 久しぶりに劇的感動を味わった。
観後は舞台の疑問など色々なことを考えながら帰る。 配られた資料を今読んで少し解決した。 「舞台上の対話は日常の再現でも模倣でもない・・」「それは思考に集中した人間持続によってしか生み出されない内面の言葉であり・・、論理的対話であり・・、論理的討論である」。 「日常では絶対に話されない言葉をリアルにしたのは三島由紀夫の力量」とあるが演出家の力も有り舞台は劇的さが倍増している。 数日間はこの作品のことが脳裏から離れないだろう。
*劇場サイト、http://www.musashino-culture.or.jp/k_theatre/eventinfo/2017/10/scot-3.html