■女殺油地獄-杉本文楽-

■原作:近松門左衛門,作曲:鶴澤清治,演出:杉本博司,出演:鶴澤清治,竹本千歳太夫,豊竹呂勢太夫,豊竹靖太夫ほか
■世田谷パブリックシアター,2017.8.11-13
■文楽ときいて劇場へ向かったが色々と趣向を凝らした内容だった。 先ずは口上で近松門左衛門が登場する。 近頃の近松作品は作者本人の登場することが多い。 時代が遠くなっているので観客との距離を縮めたいのだろう。 戯けた恰好で週刊新潮や文春を持ち出したりワイドショーの話をするから楽しい。
次が三味線序曲「地獄のテーマ」。 鶴澤清治の新曲らしい。 「テーマ」とあるからキリスト教の地獄を思い出してしまった。 しかしこの演奏では地獄には行けない。 この世とあの世の境界線をさ迷っている感じだ。 お盆だからちょうど良いのかもしれない。
「下之巻豊島屋」は二部構成に分け「前」は素浄瑠璃形式で出演は竹本千歳太夫。 少し上を向いて語る。 顔の筋肉の動きが派手である。 太夫の顔を見続けてしまった。 意味不明の個所が時々でてくる。 上演台本そのままの字幕が表示されれば有難い。
次の「奥」は人形浄瑠璃にて上演。 与兵衛とお吉の掛け合いである。 素浄瑠璃と違って語りが聞き取れる。 人形でも身体の動きが加わると言葉は時代を越えて捕まえることができるのだ。
カーテンコールには杉本博司も登場する。 今回の舞台は美術家としての顔は見えなかった。 それでも結構楽しめた。 上演台本を買ったので家に帰り早速竹本千歳太夫の顔真似をしながら声を出して読む。 とても気持ちがいい。
*劇場サイト、https://setagaya-pt.jp/performances/201708sugimotobunraku.html