■ヴェニスの商人

■作:W・シェイクスピア,演出:蜷川幸雄,出演:市川猿之助,中村倫也,横田栄司,高橋克実
■新宿バルト9,2017.6.3-9(彩の国さいたま芸術劇場・大ホール,2013.9収録)
■シャイロック役は市川猿之助。 彼の演技が他役者とは別次元にみえる。 先日の「ジュリアス・シーザー」は役者間の均衡が何とか保たれていたがこの舞台はそうならない。 ここまで差がでてしまうと諦めるしかない。 猿之助は見事な過剰だが他役者たちが歌舞伎の真似をするのは頂けない。 ポーシャ役の中村倫也はオールメール・シリーズとしては適役で面白いが土俵が違う。 役者で左右される芝居はそれなりに楽しいのだが・・。 「じゃじゃ馬馴らし」は観ていないが演出家の役者に対する考えが複雑にみえる舞台である。
「間違いの喜劇」と同じように舞台中央の通りが建物に囲まれて背景彼方へ続いている。 これをみて再びヴィチェンツァのオリンピコ劇場を思い出してしまった。 世田谷パブリックシアターの客席天井の青空と白雲をみた時も同様な記憶が蘇ったことがある。 両作品は古代ローマやイタリアに深く関係しているので舞台を真似たのであろう。 このような真似を探すのは楽しい。
録音が自然に近くなっていたが響き過ぎの感もある。 蜷川幸雄一周忌で3本も観ることができて嬉しい。 どれもシェイクスピア科白の歯切れの良さが耳に残った。
*一周忌追悼企画蜷川幸雄シアター作品