■あわれ彼女は娼婦

■作:J・フォード,演出:栗山民也,出演:浦井健治,蒼井優
■新国立劇場・中劇場,2016.6.8-26
■舞台には十字路が敷かれている。 だだっ広い劇場を逆手にとった巧い造りです。 道の延長が広さを従わせるから。 でも出会いと別れの意味は無く宗教的象徴のようです。 実はずっと日本の作品だと勘違いしていた。
すべてが途中から始まるようなストーリのため舞台に入っていけません。 たとえば兄ジョヴァンニと妹アナベラの愛、医者リチャーデットの貴族ソランゾへの復讐、ソランゾとローマ戦士グリマルディの対抗心など描き方が粗いためです。 でも2幕初めアナベラとソランゾが仲違いした後からリズムが合ってきました。 熟練演出家の力でしょう。 ソランゾの召使ヴァスケスは演出家のメッセンジャーですね。 そして「あわれ彼女は娼婦・・。」と枢機卿の科白で幕が下りるのは意味深です。
シェイクスピアとは違った面白さがある。 でもキリスト教の強さに戸惑ってしまい焦点が定まりません。 近親相姦のドキドキ感が無い。 多分兄ジョヴァンニの存在感にズレがある為でしょう。 他役者が発している作品に対する統一感から外れている。 ジョヴァンニだけが現代設定なのかもしれない。 娘アナベラの透き通った演技は印象的でしたが心の流れが追えない。 エリザベス朝時代の迷い子のようでした。
*NNTTドラマ2015シーズン作品
*劇場サイト、http://www.nntt.jac.go.jp/play/performance/special/16whore.html