■ヴォツェック

原作:G・ビュヒナ,作曲:A・ベルク,指揮:G・ノイホルト,演出:A・クリーゲンブルク,出演:G・ニグル,E・ツィトコーワ
新国立劇場・オペラパレス,2014.4.5-13
幕開きは演劇的オペラだったけど終幕はオペラ的演劇に変わっていく面白さがあったわ。 音楽が歌唱を科白に変換してしまうからよ。 「指輪」の科白を歌唱にするのとは似て非なるもの。 現代音楽の変換機能が効いているのね?
部屋が宙に浮いていて、しかも舞台は水が張られているとは驚き! 部屋が奥から観客席に近づいてくる時は目眩がしてしまったわ。
「貧乏」という歌詞がどれほどあったか数えきれない。 しかもラングやムルナウのドイツ表現主義映画に登場するような人々ばかり。 床の水も乾いた絶望感が漂っている。 子供の透き通った声も地獄の天使ね。
抽象的なリアルと言ってよいのかしら? これが終幕に近づくほど煮詰まってくるの。 貧乏という言葉が言葉のまま迫ってくる。 だから迫り切れない前半はとてもしんどかった。 マリーの率直な声が聖母のように聞こえてよかったわ。