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7月, 2024の投稿を表示しています

■それいゆ

■作・演出:天野天街,出演:夕沈,山本亜手子,雪港ほか,劇団:少年王者舘 ■スズナリ,2024.7.25-29 ■時代は敗戦から1960年代までの四半世紀、主人公ショウタロウとその家族の日常を描いているようだ。 ショウタロウを含め母や妹も一人数役で熟す。 得意の分身の術を使い彼らは舞台を駆け巡る。 これは母の夢なのか? ・・B29の爆音、父の戦死。 満蒙開拓団の帰郷は釜山から下関へ。 多くは釜山まで辿り着けなかっただろう。 夕方6時半からのラジオ放送「紅孔雀」。 松島トモ子も登場? 集団就職と飯三杯。 繁華街に屯するヤクザたち・・。 そこに<時間>の議論が入る。 得意のループだ。 これが長い。 ここまで繰り返すのか!? 舞台は映像トリックを極力避けている。 これで昭和のテンポが舞台に現れる。 多くの単語が引き金になり当時の生活がフラッシュバックのように脳裏に甦る。 でもカッタルイ。 この作品は演出家の履歴書にみえる。 7月7日に天野天街が亡くなったことを知る。 彼はアングラ四天王、寺山修司・鈴木忠志・唐十郎・佐藤信と同世代とみていた。 調べると・・、1960年生まれに驚く! まだ若い。 早世が無念であったろう。 終戦前後の記憶は家族から引き継いだのかもしれない。 今日の劇場は椅子を座布団に替えて観客をギュウギュウに詰め込んでいた。 冷房がフル回転しても冷えていかない。 300人は入っていただろうか? カーテンコールで役者全員の紹介がある。 熱気渦巻くスズナリで天街を観ることができて嬉しい。 *少年王者舘第40回本公演 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/320408 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、天野天街 ・・ 検索結果は12舞台 .

■Amomentof ■セレネ、あるいは黄昏の歌

 *以下の□2作品を観る. ■彩の国さいたま芸術劇場・大ホール,2024.7.26-28 □Amomentof ■演出:金森穣,音楽:G・マーラー「交響曲第3番6楽章」,レオタード:YUMIKO,出演:金森穣,井関佐和子,山田勇気,Noism1,Noism2 ■・・舞台にはバレエバーが置かれている。 そこで練習する舞員を背景にダンサー井関佐和子が過去を振り返る・・。 公演ポスターも張り出されてNoism20周年記念作品に相応しい内容でした。 おおらかな振付が気持ち良い。 音楽も似合っていましたね。 もちろん照明も。 余裕のみえない舞台が数年前にあったが見違える姿です。 組織を維持していくには並々ならぬ努力があったはず。 これからも素晴らしい舞台を期待したい。  □セレネ、あるいは黄昏の歌 ■演出:金森穣,音楽:マックス・リヒター「ヴィヴァルディ四季編曲」,衣装:中嶋佑一,出演:井関佐和子,山田勇気,Noism1 ■「・・セレネとは月の女神」。 舞台では儀式らしき営みが続いていく・・。 「春の祭典」と表裏の関係にみえます。 「春の祭典」が太陽ならこの作品は月ということですね。 美術も落ち着いていた。 20周年記念を含め、この舞踊団に沿う内容でした。 Noismは音楽も楽しみです。 *劇場、 https://www.saf.or.jp/arthall/stages/detail/99627/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、金森穣 ・・ 検索結果は35舞台 .

■能楽堂七月「鬼瓦」「定家」

*国立能楽堂七月特別公演の□2舞台を観る. □狂言・大蔵流・鬼瓦■出演:山本則孝,山本則重 □能・金剛流・定家(小書:袖神楽,六道,埋留)■出演:金剛永謹,福王和幸,山本東次郎ほか ■国立能楽堂,2024.7.25 ■因幡堂の「鬼瓦」が故郷で待つ妻の顔に似ている・・!? 人生上向きだから笑ってやり過ごそう。 ハハハッ・・! 「定家」上演時間は130分と長い。 「鬼瓦」の10倍ある。 シテとワキ、シテと地謡の対話リズムに乗ることが必要。 しかし調子が合わず途中居眠り。 式子内親王の墓にまで絡む定家は今なら変態ストーカーと言ってよい。 二人の関係をどうみるかで作品への態度も変わってくる。 観後、プログラムに掲載の「定家葛の創出、世阿弥から禅竹へ」(大谷節子)を読む。 二人の出会いは史実ではない。 作家の創出力に負っているようだ。 小書「袖神楽(そでかぐら)」「六道(ろくどう)」は「序の舞」で囃子が特殊な演奏をする。 素人でも分かる。 「埋留(うずもれどめ)」は終幕に囃子の演奏だけを残すのだが、いつもと変わらないように聴こえた。 それと足拍子が強すぎたかな。 シテ面は「曲見(しゃくみ)」から「泥眼(でいがん)」へ。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2024/7165/

■モリコーネ、映画が恋した音楽家

■監督:ジュゼッペ・トルナトーレ,出演:エンニオ・モリコーネ,B・ベルトリッチ,C・イーストウッド,Q・タランティーノ他 ■配信,(イタリア,2021年作) ■面白いドキュメンタリー映画だった。 2時間強は長くない。 エンニオ自身のインタビューが8割を占めていた為もある。 本人の言葉は強い。 彼の思いが伝わってくる。 音楽院時代の1950年頃から2010年代前半迄を描いている。 映画監督のインタビューも多く入っている。 J・S・バッハ一辺倒からエンニオを受け入れたP・P・パゾリーニ監督、現場でエンニオの音楽を流しながら撮影したS・レオーネ監督等々のウラ話は映画好きにはたまらない。 映画音楽というジャンルを高めた彼の功績は大きい。 同時に映画を支配しようとする戦略も感じる、たとえ言葉にしなくても。 エンニオが受け持った映画は50本近く観ている。 衝撃(感動)を受けた3本は「アルジェの戦い」(G・ポンテコルヴォ)、「ソドムの市」(P・P・パゾリーニ)、「1900年」(B・ベルトリッチ)。 すべて観後に音楽担当を知った。 映画音楽は美術や照明と同じ位置づけと考えている、エンニオとは意見が違うが。 映画音楽とは何か? 彼は映画の大事なものを壊しもした(と思う)。 *映画com、 https://eiga.com/movie/96331/

■希望の家

■演出・出演:倉田翠,出演:桑折現,白神ももこ,前田耕平,吉田凪詐,舞団:akakilike ■シアタートラム,2024.7.13-15 ■結婚式式場らしい。 会場はてんやわんやです。 マイクを持って叫ぶ司会者かつ神父、ぶつぶつ言いながらうろつき回る招待者、そしてローラースケートで舞台狭しと飛び回る新郎、ダンスに興ずる新婦とその友人? 序破急を一気にぶちまけたような舞台です。 夫婦生活・家族関係、それを包み込む家・部屋・近隣風景を語り、叫び、踊り、動き回る。 うーん、どうみても科白は関西系だ! 関西系は元気な嫌味がある。 その嫌味を昇華して元気がもらえる。 そして、少しばかりチェルフィッチュ系もみえる? 同系を修飾したような喋り方が舞台を引き立てます。 5人の演者それぞれが活き活きしていましたね。 演出家挨拶文余白に「アカキライクは、・・スタッフと出演者が常に対等である・・」に納得しました。 舞台上はバラバラにみえる5人だが、発声と動作が巧く和合され、その全てが一つのダンスとして見えた。 面白い舞台でした。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/stage/17360/

■能楽堂七月「飛越」「鵺」

*国立能楽堂七月普及公演の□2舞台を観る. □狂言・大蔵流・飛越■出演:茂山千三郎,茂山忠三郎 □能・金春流・鵺■出演:高橋忍,舘田善博,善竹大二郎ほか ■国立能楽堂,2024.7.13 ■「鵺(ぬえ)」の前場シテ面は「怪士(あやかし)」。 キマイラにはみえない。 敗者の若者にみえる。 そしてクリ・サシ・クセと流れていく場面のシテの姿・動きに圧倒されてしまった。 鵺が頼政へ次に猪の早太が乗り移ったかのように演じ、ふたたび鵺に戻り暗い海に消えていく。 ここまで興奮するとは、さすが世阿弥、舞台の面白さが伝わってくる。 後場シテ面は「小飛出(ことびで)」。 目玉が飛び出るのは人間絶体絶命の時だけだ。 「ほととぎす名をも雲居にあぐるかな・・」で鵺に頼政が乗り移るが、鵺は我に返り「暗きより暗き道にぞ入りぬべき・・」と和泉式部を読んで海に消えていく。 ここも圧巻である。 プレトーク「敗者が語る勝者の栄光」(表きよし解説)を聴いていたが、敗者が語るのではなく勝者が乗り移るのだろう。 このため舞台は敗者の無念が薄められる。 「鵺」と「頼政」の違いかもしれない。 「飛越(とびごえ)」は相手を傷つける人間の厭らしさがでている。 マウント感情を巧く表現している。 川を飛び越える動きが面白い。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2024/7163/

■フェルディドゥルケ

■原作:ヴィトルド・ゴンブローヴィッチ,演出:赤井康弘,出演:赤松由美,葉月結子,大美穂ほか,劇団:サイマル演劇団,コニエレニ ■サブテレニアン,2024.7.4-14 ■女優5人が舞台狭しに動き喋りまくる。 マイクも使う。 万国旗?が天井に飾られているが役者はそれを便器に投げ込み再び舞台に放り出す。 熱演で汗が引っ込みました。 難解な科白ですね。 言葉が留まらず滑っていくだけです。 次々に聞こえる沢山の名前、例えば<フロイト>が耳に聞こえる。 でも取り残されるだけで繋がっていかない。 <ボルヘス>や<シラー>も同じように・・、<ヘンリームーア>は彫刻家だが?<カール2世>?<ジュリアス・シーザー>、<アレクサンドリア>は地名だった?<モーセの十戒>・・きたきたキリスト教!そして<エクリチュール><テキスト>・・哲学用語も! 学校教育を論じているようにもみえる。 目まぐるしい70分でした。 アフタートークが臨時に開催される。 赤井康弘と赤松由美が出席。 トークの開催理由は舞台が難解な為らしい。 ここはスタッフも分かっている。 「戯曲を読んだら夜の大海に一人で投げ出された気分になった」(赤松)。 「舞台は権力批判だ」(赤井)。 観客から音楽等の質問がある。 トークを聞いても難解さは変わりません。 *ゴンブローヴィッチ生誕120周年記念公演 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/314717 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、赤井康弘 ・・ 検索結果は4舞台 .

■饗宴/SYMPOSION

■演出:橋本ロマンス,音楽:篠田ミル,出演:池貝俊,今村春陽,唐沢絵美里ほか ■世田谷パブリックシアター,2024.7.3-7 ■劇場の裏側を解放した舞台は広々高々していて気持ちがいい。 音響も照明も深く響き照らす。 この劇場構造を上手く活かしてますね。 演者が遠くに見える。 ダンスかと思いきやパフォーマンスに近い? 科白も入ります。 プラトン「饗宴」を意識しているらしい。 ダンサー・俳優・作家など7人の演者は付かづ離れず、付いて離れて、動き回る。 一人が<笑い>と<平和>について語っていたが少ない科白は舞台を強く引っ張ります。 振付やパフォーマンスに抑圧を振り払おうとする姿もみえる。 演技に余白が有り、それが謎に変換するので、次に何が出るのかドキドキしました。 なんとクマも登場! 音楽・照明・ダンスが分け隔てなく演じられ、計算されているが、嫌味にならず洗練された都市型舞台を出現させていました。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/320412 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、橋本ロマンス ・・ 検索結果は2舞台 .

■ザ・モーティヴ&ザ・キュー

■作:ジャック・ソーン,演出:サム・メンデス,出演:マーク・ゲイティス,ジョニー・フリン,タペンス・ミドルトン他 ■TOHOシネマズ日本橋,2024.7.5-(英国リトルトン劇場,2024.3.21-収録) ■「芝居づくりの過程を楽しんでくれ・・」。 サム・メンデスの言葉です。 ジョン・ギールグッドを演出に迎えてリチャード・バートン主演の「ハムレット」の稽古を舞台化した作品だが、両者を含めてもちろん現代の俳優が演じる。 ・・二人は途中、新旧演劇感の違いから意見が対立してしまう。 ハムレットの動機とは? 生まれや育ち、父との関係などを吐露することで二人は再び近づくことができる。 そして初日を向かえる・・。 演出家の言葉通りに過程の面白さが詰まっていましたね。 タイトルも意味深です。 舞台美術も切れがあり色彩も素晴らしい。 二人の出演した映画一覧を見てビックリしました。 思っていた以上に観ていた。 でも記憶が曖昧です。 当時は俳優から作品を観ていなかった為でしょう。 ところでハムレットを演じた役者の数は世界で20万人もいるらしい。 世の中はハムレットで溢れています。 *NTLナショナル・シアター・ライブ作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/101146/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、サム・メンデス ・・ 検索結果は3舞台 .

■能楽堂七月「文荷」「弱法師」

*国立能楽堂七月定例公演の□2舞台を観る. □狂言・和泉流・文荷■出演:野村万禄,吉住講,野村万之丞 □能・喜多流・弱法師■出演:香川靖嗣,殿田謙吉,上杉啓太ほか ■国立能楽堂,2024.7.3 ■世阿弥自筆本では「弱法師(よろぼし)」にツレが添う。 今回は原本から離れた現行の演出である。 やはり弱法師は一人で登場しないとサマにならない。 この作品はツレがいると<演劇的>、一人だと<舞踏的>に近づく。 ・・盲目の俊徳丸は難波風景を心眼で見るが、現実に戻り群衆の中に倒れ伏してしまう。 そして父から逃げようとするが、最後は共に家へ帰る・・。 前場からの淡々としたリズムを後場も持ち続けていた。 <演劇的>動きを抑えていて気持ちが良い。 <舞踏的>存在感を堪能できたのが嬉しい。 面は「弱法師」。 「文荷(ふみにない)」は主人が少人に書いた恋文を冠者に届けさせようとする話。 しかし冠者は途中で恋文を破り捨ててしまう。 能「恋重荷」をパロディにしているらしい。 中世男色文化を舞台は批判的に描いているようにみえる。 *劇場website、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2024/7162/