■ジゼル Giselle

■振付:アクラム.カーン,作曲:アドルフ.アダン,出演:タマラ.ロホ,ジェームズ.ストリーター,ジェフリー.シリオ他
■東劇,2018.11.30-12.21(リヴァプール.エンパイア劇場,2017.10.25-28収録)
■アクラム・カーン版ということで早速観に行く。 バレエというより最早ダンスだ。 それは振付のみならず衣装・美術・照明・音楽の全てに言える。
舞台背景に厚い壁がそびえている。 はじめに驚くのはヒラリオンの鋭い眼差しである。 ダンサーはジェフリー・シリオ。 動きも鋭い。 肉ではなく骨で踊っている。 群舞も動物のように跳ね回る場面が多い。 比べてアルブレヒトが不調のようだ。 日常としての肉体を感じさせてしまっている。
音楽も打楽器が耳に付く。 時々遠吠えのようなサイレンが鳴り響く。 スピーカから流れるアザーンにも聞こえる。 そして全てを通してどこか東洋の匂いが立ち込める。 それはヒラリオンが貴族らに日本式お辞儀をする場面、ウィリたちが竹棒を振り回すのにも表れている。
彼ら二人はジゼルを愛しているのか? そうは見えない。 ヒラリオンはジゼルに対してもキツイし、アルブレヒトは彼女を見る目が死んでいる。 終幕の二人の悲しい別れが迫ってこない。 これでは「ジゼル」と言えないだろう。 彼岸と此岸を分ける壁の使い方は良かったが。 別作としてみれば、これはこれで楽しいが。 マシュー・ボーンの「白鳥の湖」のほうがまだ戦略的に成功していた。
*ENBイングリッシュ.ナショナル.バレエ作品
*作品サイト、https://www.culture-ville.jp/enbgiselle