■フェードル

■作:ジャン.ラシーヌ,訳:伊吹武彦,演出:ペーター.ゲスナー,出演:荒牧大道,後藤まなみ,松尾容子,石川湖太朗,小黒沙耶,西村優子,遠藤広太,劇団:うずめ劇場
■東京アートミュージアム,2018.10.11.-2019.2.23
■仙川劇場は知っていたが当会場はその続きにある美術館らしい。 今は「椎橋和子展」が開催されている。 花鳥風月琳派系の作品は安藤忠雄設計のコンクリートによく似合う。 その絵画に囲まれた一室で芝居が行われた。 通路を使うので奥の深い舞台だ。 狭いので観客は30席しかない。
はじめは舞台の無い舞台に戸惑ったが直に慣れた。 むしろ斬新な感じがする。 役者たちの声の調子や表情も違和感があったがこれも斬新の中に溶け込んでいく。 声がコンクリートに反射してよく響く。 これにも慣れてくると科白が脳味噌に届いてきた。
王妃フェードルと待女エノーヌは漫才に近づいていく関係が面白い。 もちろん負(悲劇)の漫才だが。 待女というより会社の秘書のようだ。 王子イポリットと待従テラメータはフットワークが良過ぎる。 物語を滑っている感じだ。 これもまた楽しい。 待従より職場の後輩だろう。 アリシーにも声に存在感があった。
この作品は科白から声へ、そして役者の身体へ、言葉がベクトルに変換され豪快に迫って来ようとする。 ギリシャ神話に題材をとった中では一番気に入っている作品だ。 場面展開のリズムとスピードが心地よいからである。 今回の舞台も満足した。
開幕前、配られた役者一覧の後藤まなみから後藤加代を連想してしまった。 以前観た渡辺守章の「悲劇フェードル」を思い出したからである。 合わせて演出家ペーター・ゲスナーの挨拶やうずめ劇団の状況を読み、展示されている絵画を眺めながら豊かな時間を過ごせたのは会場選択が成功したからだろう、客席はちょっと窮屈だったが。
*うずめ劇場第29回公演
*CoRichサイト、https://stage.corich.jp/stage/95577