■ハテノウタ

■作・演出:土田英生,劇団:MONO
■東京芸術劇場・シアターウエスト,2017.3.24-29
■チラシにある100文字の粗筋を観る前に読んだことを悔やむ。 この演出家の作品は何も知らないで観に行くのが一番である。 薬の進歩で若さを保ったまま生きられるようになったが100歳で必ず死ななければいけない世界を描いている。
80数年前の高校時代の部活同窓会が舞台である。 集まった同級生は今年で100歳になる・・。 その日が決まっている死刑囚のようだが至って楽しく静かに進行していく。
部活顧問の薬に対する反乱や部長尼子が紗耶香の夫に頼む寿命の延期など極めて政治的な話が背後に蠢いているがやんわりと避けていく。 性の話もご法度らしい。 後味が悪くなりそうな予感を持って劇場に向かったが、この二つが無いことでサッパリした舞台に仕上がっている。 生と死について肯定的に考えられるヒントも与えてくれる内容だった。
死はいつか必ず来るが不安も無しに生きていけるのはそれがいつ来るか分からないからだろう。 死ぬ時が事前に分かれば人はこの芝居のように過去しか見なくなる。 記憶もあやふやだが過去形は強い。 以前観た「燕のいる駅」と違うのは死が明確になった時から死ぬまでの長さである。 今回のように何十年も前からと数個月あるいは数日しかない場合は人の意識や行動は違ってくる。 二つの作品の比較が面白い。
 *作品サイト、http://www.c-mono.com/hatenouta/