■白蟻の巣

■作:三島由紀夫,演出:谷賢一,出演:安蘭けい,平田満,村川絵梨,石田佳央,熊坂理恵子,半海一晃
■新国立劇場・小劇場,2017.3.2-19
■役者の演技や科白の輪郭が厚く塗られているような演出表現です。 三島由紀夫的厚化粧ですね。 ブラジルの湿気を含んだ暑さも影響している。 そして輪郭の中も次第に塗られていく・・。
珈琲農園主の刈屋夫妻と運転手百島夫妻のスワッピングへと進む話です。 複雑な経緯の結果としてその形が一瞬現れる。 刈屋妙子と百島健次は心中失敗の過去を持っているがそれを夫義郎は寛大にみている。 この寛大さの為か三人は<死んでいる>ように生活している。 妙子と健次の再密会のことを知った<生きている>百島啓子は再生したい義郎から妻の座を貰う。
刈屋妙子は新婚時代にNYで不倫をした、つまり健次は初めてではないと義郎は啓子に話す。 妙子の行動に戸惑います。 啓子ですが似たような人物は世間で出会うことがある。 4人の中で唯一<生きている>からでしょう。 義郎と健次の<死んでいる>ような生活をみて観客は己の人生と比較し不安を意識するはずです。 寛大さの牢獄にです。 でも現実社会ではこれが<普通>の生活でしょう。
終幕、二人はなぜ自殺をしないで帰ってきたのか? 啓子の策略を再び裏切る為でしょうか? いろいろ想像できる終幕でした。
*NNTTドラマ2016シーズン作品
*劇場サイト、http://www.nntt.jac.go.jp/play/performance/16_007979.html