■ラ・バヤデール、幻の国

■脚本:平田オリザ,演出:金森穣,出演:Noism,SPAC
■神奈川芸術劇場・ホール2016.7.1—3
■石の柱と衣装がギリシャ悲劇を連れてくるようだわ。 照明も透き通った色彩で抽象性を高めている。 皇帝の娘フイシェンの円錐形衣装は三宅一生ね。 振付も精神性があり優雅で奇をてらわない流れを持っている。 舞台の隅々まで演出家の心遣いが漂っている。
科白のある役者が3名登場するの。 騎兵隊長バートルの婚約者フイシェンと大僧正そして舞台進行役のムラカミ。 老人ムラカミと看護師が車椅子で登場した場面ではSCOTと勘違いしたくらいよ。 身体や発声動作も似ている。 でも今回の舞台にしっくり合っている。 そして老人ムラカミはかつてあった幻の国マランシェと三つの民族にまたがる愛の物語を語り始める・・。
台詞に「帝国」という言葉がとても多い。 ギリシャではなくローマへ舞台の歴史が動いていくようにみえる。 しかし季節の描写には満州らしき風景もみえる。 客席で満鉄の話も聞こえたけど考え過ぎね。 作品が小さくなってしまう。 バレエ*1では湿ったインドが背景なのにこの舞台はとても乾いている。 草原の匂いね。 帝国とは何か? 演出家は格調高い抽象性と統一性の有る舞台全体で帝国を表現したのかもしれない。
*1、「ラ・バヤデール」(NNTT2015年)
*作品サイト、http://labayadere.noism.jp/