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■バレエ・トゥ・ブロードウェイ

*下記□4作品を観る. 振付は全てクリストファー・ウィールドン. □フールズ・パラダイス■音楽:ジョビー・タルボット,出演:高田茜,ウィリアム・ブレイスウェル,マリアネラ・ヌニュス他 □トゥー・オブ・アス(ふたり)■音楽:ジョニ・ミッチェル,出演:ローレン・カスバートソン,カルヴィン・リチャードソン □アス(僕たち)■音楽:キートン・ヘンソン,出演:マシュー・ボール,ジョセフ・シセンズ □パリのアメリカ人■音楽:ジョージ・ガーシュウィン,出演:フランチェスカ・ヘイワード,セザール・コラレス他 ■TOHOシネマズ日本橋,2025.9.19-25(ロイヤル・オペラ・ハウス,2025.5.22収録) ■クリストファー・ウィールドン振付特集だ。 気に入った彼の作品は多い。 でも記憶に残るほどではない。 彼は<核>を作るのが苦手なようだ。 例えば「フールズ・バラダイス」「トゥー・オブ・アス」「パリのアメリカ人」はここぞ!という場面がない。 4作のなかでは「アス」が面白かった。 緊張感があった。 今日はこれが一番かな。 同じデュオの「トゥー・オブ・アス」は歌唱も入り楽しい舞台でもあったが盛り上がりに欠けた。 二人の感情が表層を滑るだけだ。 歌詞がダンサーに重荷だったのかもしれない。 松竹ブロードウェイ(映像)で観た「パリのアメリカ人」は素晴らしい舞台だったことを覚えている。 でも今日は期待外れだ。 似て非なる作品になっていた。 美術・衣装はモンドリアン風でヒールを履いたダンサーも登場し賑やかだ。 しかし舞台のダンサーたちに有機的な統一感はみえない。 「気に入った舞台もあるが記憶に残るほどでもない」というウィールドン印象から今日も抜け出せなかった。 話を変えるが、解説場面で1舞台で用意するシューズ数が話題になっていた。 元ダンサーは「ロメオとジュリエット」が2足、「白鳥の湖」は4足とのこと。 つまり白鳥のほうがロメオに比べてシューズへの負担が2倍かかるということらしい。 素人からみても2倍は妥当にみえた。 *英国ロイヤル・バレエ&オペラinシネマ2024作品 *主催、 https://tohotowa.co.jp/roh/movie/?n=ballet_to_broadway2024 *「ブログ検索🔍」に入れる語句...

■アリババ ■愛の乞食

■作:唐十郎,演出:金守珍,出演:安田章大,壮一帆,伊東蒼ほか ■世田谷パブリックシアター,2025.8.31-9.21 ■唐十郎二本立てを観るため三軒茶屋へ行く。 と、劇場に入って驚いてしまった。 20歳代の女性客が8割近くを占めている。 思わずチケットを確認してしまった。 そこから先日観た「 少女仮面 」の客の多くが高齢者だったことを思い出す。 食う・愛する・産む・排泄する・・。 人間の生きる土台があからさまに舞台にのせられる。 そういう時代があったのだと思い起こさせる。 排泄の成果物まで客席へ投げつけてくる。 戦中戦後世界を詰め込んだ2作品だ。 戦後貧困のなかで女性が子供を産む苦悩、混乱の満州で中国人朝鮮人そして日本人たちの生存への剥き出しな欲望、これらを唐十郎的ロマンで包みシュールに仕立て上げて舞台に現前させていく。 ストーリーが激しく飛ぶので流れに身を任せるしかない。 しかも関西弁だ。 そして唐十郎のテンポは速い。 リズムが合い、初期作品のエキスに出会えた感触を持てた。 演出家の力も大きい。 珍しい作品を舞台にのせてくれた関係者に感謝したい。 ところで今日の客は舞台上からの応答がとても上手かった。 贔屓筋かな? 不思議な客層だった。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/stage/26364/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、金守珍 ・・ 検索結果は14舞台 .

■蝶々夫人

■作曲:G・プッチーニ,指揮:スペランツァ・スカップッチ,演出:ロバート・ウィルソン,出演:エレオノーラ・ブラット,ステファン・ポップ,オード・エクストレモ他,管弦楽:パリ・オペラ座管弦楽団&合唱団 ■TOHOシネマズ日本橋,2025.9.12-(オペラ・バスティーユ,2024.9.30収録) ■ロバート・ウィルソンの訃報を先日に知った。 彼の舞台はいつも気にしていた。 でも多くは接することができない。 「浜辺のアインシュタイン」は1992年10月に天王洲アートスフィアで観ている。 他に記憶に残るのは「ハムレット」(1994年4月、静岡芸術劇場)、「ヴォイツェク」(2003年9月、東京国際フォーラム)かな。 10月公演「Mary Said What She Said」に来日を予定していたらしい。 叶わなくなってしまい残念だ。 今回の「蝶々夫人」はスケジュール外の出会いだったので嬉しい。 時間を割いて観に行く。 舞台はなにも無い空間、歌手は彫像のように(余分に)動かない。 衣装もシンプルで古代ギリシャ風?だ。 この抽象化が「蝶々夫人」に合う。 日本文化を翻訳しないからだ。 子供の使い方も巧い。 しかし舞台空間が広すぎる。 間が抜けたようだ、生舞台を観ないと何とも言えないが。 蝶々役エレオノーラ・ブラットもピンカートン役ステファン・ポップも無機質な演技だ。 でも歌唱が加わると有機的世界へ導いてくれる。 たとえ抽象化が激しくても、近代日本の女性の生き方が迫ってきて涙を誘う。 加えてロバート・ウィルソンの舞台を久しぶりに楽しんだ。 *パリ・オペラ座inシネマ2025作品 *主催、 https://tohotowa.co.jp/parisopera/movie/madama_butterfly/

■サラダ音楽祭、メインコンサート

■指揮:大野和士,出演:砂田愛梨,松浦麗,寺田宗永,狩野賢一,合唱:新国立劇場合唱団,管弦楽:東京都交響楽団,振付:金森穣,舞団:Noism ■東京芸術劇場・コンサートホール,2025.9.15 ■バラエティに富んだ選曲で楽しめた。 前半はモーツァルトで固め、後半を舞踊系でまとめたプログラムは次の5曲・・、 歌劇「魔笛」序曲、「戴冠式ミサ」(モーツァルト)、「フラトレス」弦楽と打楽器のため(ペルト)、バレエ音楽「三角帽子」第2組曲(ファリャ)、「ボレロ」(ラヴェル)。 Noismが出演するというのでチケットを購入した。 昨年もボレロを踊ったらしい。 演奏している前で舞うには狭い舞台だ。 でもコンパクトな振付で締まりがあった。 「三角帽子」の1919年初演の演出はレオニード・マシーンだった。 今日は演奏のみだ。 「フラトレス」と違い当振付家の好みの曲ではないだろう。 (欲を言えば)即興的振付で観たかったが。 賑やかな曲のため演奏だけでも楽しめた。 また「戴冠式ミサ」ではソプラノ砂田愛梨の歌唱が耳に残った。 カーテンコールで盛り上がったが、やはりNoismの「ボレロ」が当たったようだ。 *劇場、 https://www.geigeki.jp/performance/concert303-c303-2/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、金森穣 ・・ 検索結果は40舞台 .

■能楽堂九月「墨塗」「花筐」

*国立能楽堂九月普及公演の□2舞台を観る. □狂言・大蔵流・墨塗■出演:茂山千五郎,茂山逸平,茂山茂 □能・宝生流・花筐(小書:大返,舞入)■出演:朝倉俊樹,小倉伸二郎,大日方寛ほか ■国立能楽堂,2025.9.13 ■「花筐(はながたみ)」のプレトーク「恋することは狂うことか?」(山中玲子解説)を聴く。 ・・物狂いは2種類ある。 それは「憑物」と「思い」である。 夢幻能が登場して「憑物」は衰えた。 物狂いは男から母そして若女へと時を辿った。 「狂う」も現代的意味と<芸能を演じる>という2つの意味がある。 両意味を巧みに組み合わせることが多い。 当作品もこれに沿う。 世阿弥の狂物は前場が短く後場が長い、しかも時空が飛ぶ・・。 などなどを語る。 「墨塗」(すみぬり)」も物狂いと言えなくもない。 演劇の通底には物狂いが蠢いているのを感じる。 「花筐」はトークにもあったが面白い構造だ。 「ツレを連れた狂物はこの作品だけ」と言っていたのも思い出す。 双子のようなシテとツレは見応えがあった。 面はシテが「節木増」ツレ「小面」。 しかし「李夫人の曲舞」は頂けない。 ここで物語が途切れてしまった。 漢武帝と李夫人、皇子と照日前、二組の関係はあらゆる面で違うように思える。 世阿弥はどのように考えていたのだろうか? *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2025/7023/

■ニュルンベルクのマイスタージンガー

■作曲:R・ワーグナー,指揮:ダニエレ・ガッティ,演出:マティアス・ダーヴィッツ,出演:ゲオルク・ツェッペンフェルト,クリステイーナ・ニルソン,マイケル・スパイアーズ他,管弦楽:バイロイト祝祭管弦楽団 ■NHK配信,2025.9.1(バイロイト祝祭劇場,2025.7.25収録) ■今月に入りワーグナーは3本目だ。 今年のバイロイト音楽祭から当作品がNHKで放映された。 新演出の為かな? ・・漫画チックな美術が凡庸な舞台に近づける。 2幕「蹴り合いの場」ではリングにロープを張ったボクシングまで登場する。 また3幕ヨハネ祭りはポップな美術・衣装で一杯だ。 これらは作品との深い繋がりはみえない。 見た目は楽しいが興ざめもする。 そしてヴァルターはマイスター称号を拒否したままエヴァと駆け落ちして幕が下りる。 これも後味が悪い。 父親やザックスは無念だろう。 ベックメッサーも惨めすぎる。 競争相手をこれだけ貶めると舞台が盛り上がらない。 ・・。 喜劇と呼ばれている作品だが演出家の喜劇にはついていけなかった。 上映5時間弱(休息無し)は長かった。 ワーグナーの舞台は長いが短い。 この相反感覚が今回はやってこなかった。 騎士のヴァルター役マイケル・スパイアーズは伸びのある声で聴き応えがあった。 また合唱団は臨時編成(?)らしく新鮮味が出ていた。 最近はチケットの売れ残りもあると聞いている。 舞台芸術はどこもしんどい。 盛り立てていきたいものだ。 *バイロイト音楽祭2025年作品 *NHK、 https://www.nhk.jp/p/premium/ts/MRQZZMYKMW/episode/te/V3NJMYWRPJ/

■ワルキューレ

■作曲:R・ワーグナー,指揮:アントニオ・パッパーノ,演出:バリー・コスキー,出演:クリストファー・モルトマン,エリザベート・ストリート,ナタリア・ロマニウ他,ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団 ■TOHOシネマズ日本橋,2025.9.5-11(ロイヤル・オペラ・ハウス,2025.5.14収録) ■上演時間5時間(休憩含む)は長い、そして短い。 緊張ある対話が続くがヴォータンの存在が流石に目立つ。 「ラインの黄金」ではアルベリヒとバリトン域を競い合ったが今日は彼の独断場だった。 しかも髪を伸ばし義眼に変えたので最初は別人かと思ってしまった。 エルダも舞台を徘徊しているが大丈夫だろうか? 2年の歳月は短くない。 これを意識して若い歌手を多く登場させたのは戦略だろう。 でも彼らの存在力はこれからに期待するしかない。 「環境問題がテーマである・・」、「故郷オーストラリアの山火事を体験・・」。 舞台監督と演出家が語っていた。 フンディングの館をトネリコの壁で覆った1幕、荒野にトネリコの廃木を置く2幕、ブリュンヒルデを埋めたトネリコが炎に包まれる3幕。 テーマも山火事も分かるが環境問題を考えると舞台の面白さが遠のく。 「食卓にはジャガイモとトリ肉を・・」。 舞台監督の飽くなき拘りがみえるが、飲食は最低限にしてもらいたい。 食べる演技はとても難しい、フンディングの食べっぷりは豪快で巧かったが。 ところで指揮者パッパーノが音楽監督を引退するらしい。 「・・22年間で700舞台を熟した」とインタビューで話していた。 感動が遠のく前に新指揮者ヤクブ・フルシャの「ジークフリード」を観たいものだ。 エルダ、それまで元気でいてくれ! *英国ロイヤル・バレエ&オペラinシネマ2024作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/102664/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、バリー・コスキー ・・ 検索結果は2舞台 .

■ラインの黄金

■作曲:R・ワーグナー,指揮:アントニオ・パッパーノ,演出:バリー・コスキー,出演:クリストファー・モルトマン,クリストファー・バーヴェス,ショーン・パニッカー他,ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団 ■RBOストリーム・配信(2023.9,ロイヤル・オペラ・ハウス収録) ■英国ロイヤル・バレエ&オペラ・イン・シネマで「ワルキューレ」を9月5日から上映するようだ。 「ラインの黄金」は2023年秋に上映されたらしい。 これは見逃していた。 ウェブを探し回り「RBOストリーム」に辿り着く。 そこで見つけた。 早速観る。 幕開きから驚きの連続である。 裸体の老婆が舞台を歩き回っている? 途中で分かる。 老婆はヴォータンの妻そしてブリュンヒルデの母である女神エルダだった! うーん・・? そして現代的病を持つ人物が勢揃いした演劇をみているような錯覚に陥ってしまう。 一幕2時間半を一気に観てしまった。 他の「指輪」、例えばMET(メトロポリタン)やNNTT(新国立劇場)と比較しても言語的演技的な斬新さがある。 そこに切れ味の良い歌唱がより演劇を意識させる。 ところでRBOは序夜から今回の第一夜「ワルキューレ」まで2年かかっている。 この流れだと第三夜「神々の黄昏」を観るのは2029年かな? NNTTは2015年に序夜を、2017年までに全夜を上演している。 まっ、2年が妥当だろう。 ともかく、第一夜を観に行こう。 *英国ロイヤル・バレエ&オペラinシネマ2023作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/100622/

■能楽堂九月「才宝」「玄象」

*国立能楽堂九月定例公演の□2舞台を観る. □狂言・和泉流・才宝■出演:野村萬,野村万之丞,野村挙之介,野村眞之介ほか □能・観世流・玄象■出演:片山九郎右衛門,分林道治,長山桂三,観世淳夫,宝生欣哉ほか ■国立能楽堂,2025.9.3 ■三人の孫が烏帽子(えぼし)を着せてもらうため祖父を訪ねる話である。 「才宝(さいほう)」は祖父の名前らしい。 祝の酒宴が楽しい。 「玄象(げんしょう)」は琵琶にまつわる伝承をもとにした興味深い作品だ。 琵琶の名手であるワキ役藤原師長(ふじわらもろなが)、文雅に優れたシテ役村上天皇、美しい黒髪を持つツレの梨壺女御。 背景をいろいろ思い出しながら観てしまった。 手に持つ琵琶は名器である玄象そして獅子丸らしい、もちろん張りぼての作り物だが。 リズムある後場が素晴らしい。 龍神の速い動き、シテの早舞は確かな観応えがあった。 面はシテが「笑尉(わらいじょう)」から「中将」へ、ツレは「姥」から「黒髭」へ。 今日は中正面席に座る。 橋掛りから舞台まで一望できるのが嬉しい。 「才宝」では祖父の歩く姿、「玄象」では村上天皇と梨壺女御の入場、龍神の等速度な走り、などなどを堪能した。 歩く姿だけが何故これほどまでに劇的なのか! *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2025/7022/