■終わりのない

■演出:前川知大,出演:山田裕貴,安井順平,浜田信也,盛隆二,森下創,大窪人衛,奈緒,清水葉月,村岡希美,仲村トオル,劇団:イキウメ
■世田谷パブリックシアター,2019.10.29-11.17
■原点はホメロスの「オデュッセイア」らしい。 終わりのない人類の旅には円形舞台が似合っている。 物理学の不思議な現象を絡ませながら主人公ユーリがパラレルワールドを行き来しながら人間として成長する物語のようだ。
時空を超えた宇宙の広さを感じながらストーリが展開するのはなんとも気持ちが良い! はたして手塚治虫の「火の鳥」をパラレルに思い浮かべながら観てしまった。 ロボットの反乱、日本の地形風景と同じ天体の存在等々はSFの定番である。
しかし漂流した地球人エイがホワイトホールの向こう側に来たことを地球人に伝えてくれとユーリに頼むのはシンドイ。 これを見ながらクリストファー・ノーラン監督の「インターステラー」で本棚から本を落として伝える場面を思い出してしまった。 後者は時空を超えた感動が押し寄せてくる。 (ぅぅ、話が逸れだした・・)。
加えて現代量子論を持ち込むと厄介が増える。 物理学者を登場させ量子論を言葉で展開したが、解説抜きで意識と無意識・個と全体を巧く繋がせたいところだ。 ところでアンが登場した時にユーリに向かって「あなたを助けに来た」と言っていたが、助ける場面を見過ごしてしまったかな? そのユーリ役山田裕貴がエッジの効いたイキウメ俳優と違った柄をもっていたので新鮮に見えた。
この舞台はSFの世界に入り込み過ぎてしまったと思う。 色々なSF作品を思い浮かべてしまい収拾がつかない(誉め言葉)。 ユーリが泣き出してしまう終幕は彼の意識の覚醒からくる人類の(宇宙での)孤独を感じる。 日常世界からみると彼の青春の終わりにもみえる。 しかし泣いてばかりいてもしょうがない。 泣いている時間も長すぎた。 ここは21世紀版「幼年期の終わり」を目指してもよいのだが。 ・・終わりの話ばかりになってしまった。 終わりのない旅こそ人類の希望かもしれない。
*劇場、https://setagaya-pt.jp/performances/owarinonai20191011.html