■掬う

■演出:山田佳奈,出演:佐津川愛美,山下リオ,馬渕里何,千葉雅子ほか,劇団:ロ字ック
■シアタートラム,2019.11.9-17
■舞台下手にキッチンと言うよりは台所、その続きには安っぽいソファや机が置いてある。 冷蔵庫ドアには何枚ものメモが・・。 しかも演出家の挨拶に「初めての家族の話」と書いてある。 終幕には定番の喪服姿も登場する。 こういう芝居は実は避けたかった。 現実世界に戻されてしまうからです。
嫌な予感が当たりました。 夫婦喧嘩と兄弟喧嘩で満たされている。 親子喧嘩が少ないだけまだマシと考えなければいけない。 主人公である妹瑞江の両親が真面に登場しないからです。 父は入院中で母は離婚したらしい。 その代わり父の弟妹の登場で風景は20世紀中頃まで遡る。 でも見ず知らずの他人まで家に住み込みさせるのは驚きですね。 21世紀型家族の拡張でしょうか?
ともかく怒鳴り合い、泣き叫ぶ場面が多い。 菓子を食べ散らかす。 主人公の内なる言葉が壁に写し出されますが読む気のでない文字列です。 終幕、瑞江が離婚前の夫庸介と仲直りをして幕が下ります。 夫婦としては並みの和解ですが、登場人物たちが異常だった為まとも以上に見えました。 
瑞江(みずえ)の家族は社会の構造・制度を全く無視して閉じた世界を作っている。 そこで兄弟・夫婦は互いに侮言ギャグを連発していく。 台詞の断片は面白いが観ていて苦しい舞台でした。 唯一、夫庸介が真摯にみえた。 瑞江の世界が硬直していた反動でしょう。 叔母「猫のホテル」が家族をまとめようと頑張っていましたね。
この劇団は初めて観ます。 劇団名を「しかくじっく」と読んでいたのですが「ろじっく」が正解らしい。 フォントが□にみえていたからです。 観客は8割が男性で30歳前後が多い。 後方席はガラガラでした。 シアタートラムでこんなにも空席が目立つのは珍しい。 女性客を増やせれば席は埋まるはずです。
*劇場サイト、https://setagaya-pt.jp/performances/sukuu201911.html