■もうひとつの地球の歩き方

■作・演出:鴻上尚史,出演:秋元龍太朗,小沢道成,小野川晶,三上陽永ほか
■座高円寺,2018.1.19-28
幕の内弁当を食べているような舞台です。 色とりどりのおかずとして、会社の上司と部下、同僚そして恋人、会社のお客や業者、放送や新聞記者、SNS投稿者に読者、学校の教育委員や先生と生徒、そして農民などが当てはまる。 テロリストも登場する。 御飯は天草四郎。 御飯にふりかけた黒ゴマや梅干はAIでしょうか。 
AIで天草四郎を作り出そうとする途中で主人公のプログラマーに天草四郎の霊が乗り移ってしまう。 上に掲げた多くの関係者を巻き込んでのテンヤワンヤの騒動になる話です。
登場人物は現代社会で活躍する職業人を想定しているので踊りも衣装もカラフルでスカッとした躍動感があります。 ストーリーの段落の繋ぎも淀みがなく物語と一緒に走ることができる。 しかし終幕で失速してしまった。 天草四郎がいつの間にか消えてしまったのです。 そして主人公の恋愛話に戻り日常風景で幕が下りてしまった。
この作品は幕の内弁当のおかず(=登場人物)を一つ一つ摘まみながら御飯を食べる(=17世紀天草四郎の行動から現代社会を考える)楽しさを出したかったのでしょう。
ところでAIは曲者ですね。 完成したAI天草四郎が使い物にならなかったのは怖れを持っていないからだと言っている。 AI自身は意識は持っていないし意味も理解できない。 しかし喜怒哀楽の真似事は近々未来にできるはずです。 この精緻で巧妙な真似事を前にヒトは対処できるのでしょうか? そして劇場サイトに<生身の人間>の良さを演出家が語らなければならない時代になってしまったのでしょうか?
*虚構の劇団第13回公演
*劇場サイト、http://za-koenji.jp/detail/index.php?id=1829