■クレオパトラ

■演出・振付・台本:熊川哲也,音楽:カール・ニールセン,美術:ダニエル・オストリング,衣装:前田文子,照明:足立恒,出演:中村祥子,山本雅也,スチュアート・キャシディ,宮尾俊太郎,遅沢佑介,K-BALLET COMPANY
■恵比寿ガーデンシネマ,2018.1.6-(オーチャードホール,2017.10.29収録)
■「<完璧>をみてほしい!」。 熊川哲也の言う通り非の打ちどころが無い。 この完璧さは作品構造と中村祥子の二つの結合から成り立っているの。
クレオパトラに近づいては消えていく男達をみていると歴史の流れの速さが身に迫ってくる。 プトレマイオス、ポンペイウス、カエサル、ブルータス、アントニウス、オクタヴィアヌス・・。 背景のエジプトからローマ、そして再びエジプトと伴に移り変わっていく美術と衣装はお見事。 英雄群像叙事詩としての完璧さだわ。
そしてクレオパトラの中村祥子が素晴らしい。 一幕初めの神殿男娼との愛の絡み合いは文句なし。 チャイコフスキー作品の彼女は微妙な違和感があったけど今回それを払い除けていた。 クレオパトラとの心身一体の完璧さよ。
この二つの完璧は上手に出会えたのかしら? お互いの結び目が見えずクレオパトラの肉体的妖しさも歴史の流れに飲み込まれてしまったようね。 感情的感動が湧き起こらない。 唯一人間味が感じられたのはクレオパトラから離れない宮廷道化師?の彼女への暖かい仕草と終幕になってのオクタヴィアの結婚への喜びだけだった。
でも熊川哲也が目指したのはクレオパトラと英雄たちの叙事詩的感動の結晶化だと思う。 完璧さを備えた結晶は喜怒哀楽を昇華し一つの到達点として耐えることができるの。 歴史の中で一瞬みえたクレオパトラと男たちを結晶にするには、強靭な心身を持つ今の熊川哲也にしかできない。 それにダンサー達も十二分に応えていた。
*作品、http://www.tbs.co.jp/kumakawa/special/