■トロイ戦争は起こらない

■作:ジャン・ジロドゥ,演出:栗山民也,出演:鈴木亮平,一路真輝,鈴木杏,谷田歩ほか
■NHK・Eテレ,2018.1.13(NNTT,2017.10収録)
■時計を意識した舞台美術にした、と演出家が言っていたが対話や議論のできる物理空間に仕上がっています。 公演を見逃したが今回TVで観ることができました。 この作品は女性と戦争の関係を描いている。 平和と戦争の周辺を歩き回るだけの一幕だが二幕になるとその奥へ入り込んでいく・・。
女性(の交換)は贈与か商品かでトロイ高官が意見を戦わせる。 トロイ王子エクトールが女性を贈与として受け止めていると判断したギリシャ将軍オデュッセウスはギリシャ王妃エレーヌを連れてそのまま帰ろうとする。 しかし女性を商品としてしか見ることができない人々の間で戦争は起きてしまう・・。 エクトールの妻アンドロマックもギリシャ兵からその屈辱を受け耐える。 「戦争は人間を平等にする為のもっとも浅ましく偽善的なやり方である」とエクトールは言う。 平等を内包する商品に仕立て上げられた女性を国民にまで広げ極限状況に陥ったのが戦争です。
王妃エレーヌは何かを象徴しているようだがよく分からなかった。 彼女は自身の誘惑を贈与と考えていたのではないでしょうか。 たぶん象徴とは純粋贈与つまり愛ですがこの作品はそこに深入りしない。 ところで映像で登場したギリシャの神々はいただけない。 人間だけで勝負したいところです。
*NNTTドラマ2017シーズン作品
*劇場サイト、http://www.nntt.jac.go.jp/play/performance/16_009658.html