■フリック

■作:アニー・ベイカー,翻訳:平川大作,演出:マキノノゾミ,出演:木村了,ソニン,村岡哲至,菅原永二
■新国立劇場・小劇場,2016.10.13-30
■2012年のアメリカ東部マサチューセッツ州、デジタル化が押し寄せているのに未だフィルムで上映をしている古ぼけた映画館が舞台です。 そこで3人の若者が働いている。
前半は彼らの仕事場面が描かれる。 もちろん映画の話が一杯です。 映画好きにはたまりません。 科白に「間」があるので独特なリズムが映画館に響き溜っていきます。 リズムある芝居は映画に近づいていく。 「アメリカングラフィティ」が歳を重ねた作品にもみえる。 そこに「ゴドーを待ちながら」が加味されているからです。
登場する51本の映画名が載っていたのでプログラムを購入しました。 早速、観た映画を数えたら25本・・。 「突然炎のごとく」「白夜」「マンハッタン」「マルホランド・ドライブ」「AI」も掲載されていて嬉しいすね。 映画は世代が少しでもズレると作品が合いません。 51本中約半分しか見ていないのでも分かります。 しかも米国映画は俳優重視になる。 エイヴリとサムの対話にもそれが現れています。
後半は映画作品から離れていく。 二つのクライマックスがあります。 サムはローズが好きなのですが上手く言い出せない。 土壇場で告白するがその時ローズを見つめられない。 女は見つめてもらいたい。 ローズの強い性格がこの不満を口に出す。 男は余計彼女を見つめられなくなる。 ・・。 サムの鶏頭はよかった。 もう一つは入場料をピンハネしていたことがバレてしまった場面です。 エイヴリが旧約聖書エゼキエル書?の一節を読んで一人で責任を背負う。 彼は眼鏡を外し喋るのですが残念ながら血肉まで伝わってこない。 米国なら観客はここで震えたのではないでしょうか? この二か所がピュリッツァ賞等受賞の理由と考えたがプログラムに後者のことは書かれていない。 聖書場面で感動に迫ることができれば日本上演も合格でしょう。
*NNTTドラマ2016シーズン作品
*劇場サイト、http://www.nntt.jac.go.jp/play/performance/151225_007977.html