■ニュルンベルクのマイスタージンガー

■作曲:R・ワーグナー,指揮:J・レヴァイン,演出:O・シェンク,出演:M・フォレ,J・ボータ,A・ダッシュ,J・M・クレンツレ
■東劇,2015.2.7-13
■神も死者も登場しないワーグナーよ。 それも結婚をかけた歌合戦とは。 でも平安時代の歌合せとは違うみたい。 「神聖ローマ帝国が消えてもドイツ芸術は残るだろう」とザックスが言っているように、歌やその背景に高尚さを求めているようね。
歌合せを材料にするとはワーグナー余裕の非凡さがでているわ。 オペラとのネスティングになるからよ。 対話や掛け合いが芝居や歌曲に混ざりこんで重層的な面白さが出ている。
歌合戦に出場する騎士ヴァルタは一幕に靴職人徒弟ダフィトから歌規則を、三幕には歌匠ザックスから結婚を例に歌の作り方を教えてもらうの。 観客は歌合戦の知識を得るから物語がぐっと近くなる。 でも解説的になってしまったのは致し方ない。 日本語訳だから尚更ね。
ベックメッサの2幕「セレナーデ」と3幕「本選歌」の場面は笑わせてもらったけど、彼は裏の主役として印象深かった。 ヴァルターの歌唱は伸びがあって素晴らしい。 エファは田舎娘のようで適役だけど声に量があれば尚良かった。 そしてヨハネ祭は舞台美術の巧さと民衆の動きで本当にお祭り現場にいるようだった。
ワーグナーはいつも意味深な何かを持ってくるの。 市井の話でも寓話などが感じ取れるからよ。 舞台を観ながらこの気配に浸るには6時間近くの上演時間が必要ということね。
*METライブビューイング2014作品
*作品サイト、http://www.shochiku.co.jp/met/program/s/2014-15/#program_05