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8月, 2024の投稿を表示しています

■夢遊病の娘

■作曲:V・ヴェリーニ,指揮:エヴェリーノ・ピド,演出:メアリー・ジマーマン,出演:ナタリー・デセイ,フアン・ディエゴ・フローレス,ミケーレ・ペルドゥージ他 ■東劇,2024.8.25-9.21(メトロポリタン歌劇場,2009.3.21収録) ■アンコール上映で未だ観ていなかった作品がこれ。 ベルカント・オペラの傑作らしい。 夢遊病者アミーナが伯爵の部屋に入ってしまい許婚から不倫を疑われてしまう話よ。 「スイスの村が舞台であるこのオペラを、現代のニューヨークの稽古場に置き換えて演出しており、洗練されたコンテンポラリーな舞台が印象的」。 外の眺めはビルばかり、いつのまにか雪も降っている・・。 物語の先が読めてしまうから、どのようにまとめるか心配が過る。 2幕も平凡な流れだが、でも心に染み入る力があるの。 素直な歌唱がジワッと迫ってくる。 演奏も歌唱と心象的に交じり合い心に響く。 アミーナ役ナタリー・デセイは突き刺さるような発声もあり、表情も夢遊病者に近づいていた。 でもベルカントとしてはどうかしら? 実は新国立劇場新シーズンの開幕作品もこれ。 今回は予習として観たけど、10月が楽しみだわ。 *METライブビューイング2008年シーズン作品 *MET、 https://www.shochiku.co.jp/met/program/s/2008-09/#program_09 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、メアリー・ジマーマン ・・ 検索結果は4舞台 .

■代が君・ベロベロ・ケルベロス

■演出:下島礼紗,出演:木頃あかね,小泉沙織,中澤亜紀ほか,舞団:ケダゴロ ■シアタートラム,2024.8.22-25 ■・・もし戦時中の国民体育大会を見たら、このような舞台だった? 先ずは国歌演奏、衣装は男が褌(ふんどし)で女はブルマ、整列や速足らしき動きと組体操、淫らで楽しい宴会余興も。 20世紀前半日本の風景がみえる。 でも大きな回し車にダンサーが入ってネズミのように疲れ切るまで走り続けるのは何故? そして黒衣装で頭部を前後する踊りはケルベロスのギリシャへワープしてしまう? 混沌たる舞台が続きます・・。 演出家の挨拶文に「日本の国体を考える」とある。 ダンスで<国体>を描くと<国民体育大会>に<宴会余興>を混ぜ合わせたようになる。 <国体>とは支離滅裂なものかも。 はたして振付の多くに「産めよ殖やせよ!」が見え隠れする。 これが挨拶文の答えかもしれない。 観ていながら少子化を考えてしまった。 1億2千万人の今の人口は戦争が影響している。 本来なら昭和初期の人口6千万人を微増減しながら継続するのが自然だった。 現代日本人の生物的歴史的な無意識が少子化を進めていると思う。 将来、日本がより豊かになる条件は戦争を避けながら人口を半減させることでしょう、国体に反しますが。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/stage/18732/

■朝日のような夕日をつれて2024

■作・演出:鴻上尚史,出演:玉置玲央,一色洋平,稲葉友,安西慎太郎,小松準弥 ■紀伊国屋ホール,2024.8.11-9.1 ■暑さが吹き飛ぶ熱い舞台でした。 古臭い紀伊国屋ホールだが舞台照明の配置を見ただけでゾクゾクと震えが来ました。 そこに、役者5人のキリッとした動きと途切れぬ科白が朝日のような眩しい夕日をつれてくる! 演出家が長年拘ってきた情報化社会、特に仮想現実をテーマにしている。 ゲーム会社の社長と部長、マーケティングや技術担当が新しい商品を四苦八苦しながら開発する話です。 特にAI(人工知能)が前面に出ていますね。 人間の相手は人工知能でも可能か? <想像>と<創造>を作れない人工知能でも膨大なデータ処理の結果を人間は可能と判断してしまうでしょう。 人間活動の混乱は必須です。 同時並行して「ゴドーを待ちながら」が演じられる! これは現実舞台として混乱しました。 なぜゴドーなのか? このブログを書いている今でも分からない。 この舞台は<待つ>機会が無かったからです。 久しぶりの紀伊国屋ホールでした。 ところで劇場の椅子が新しくなっていた、デザインは旧と略同じ。 この椅子は窮屈だが座り易い。 舞台に集中できます。 帰りのホールはごった返していましたね。 並んでプログラムを購入しました。 今日の観劇がお盆休みを最高にさせてくれました。 *紀伊国屋ホール開場60周年記念公演 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/327125 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、鴻上尚史 ・・ 検索結果は6舞台 .

■ブレス・トリプル BREATH TRIPLE

■作・演出:小池博史,美術:山上渡,音楽・演奏:下町兄弟(pc.rap),中村恵介(tp),衣装:浜井弘治,映像:白尾一博,出演:松島誠,今井尋也,小林玉季,中谷萠 ■EARTH+GALLERY,2024.7.29-8.9 ■舞台図面をみると幅5m奥行9mの広さでした。 その壁に絵を描き、映像を映し出し、床に小道具を置き、演奏者2名を配し、役者4人が動き回る。 1年前に「WE-入口と世界の出口」をここで観ています。 今回も劇場空間にあらゆるものを詰め込んだ凝縮力が凄まじいですね。 美術・音楽・映像・ダンス・演劇を串刺しにした舞台です。 19世紀末のブラジル起きた「カヌードスの乱」を下敷きにしているようです。 農民、宗教者、権力者が入り乱れる。 このため科白が断続的に続くので舞台は演劇に近づきます。 アフタートークで梅村昇史が演劇の話をしたのはこれを感じ取ったからでしょう。 「<演劇>にこだわる人は多い、しかし・・」(演出家の挨拶文)。 演劇にどっぷり浸かることは避けたい。 壁に描いた民衆絵画を映像で映し出すとリアルさを感じます。 そして荒野を撮ったカラー映像がとても美しかった。 そこにアルレッキーノ風仮面を付けた白塗りの役者をみているとブラジルが現前します。 ブラジルと言えば「悲しき熱帯」(レヴィ・ストロース著)を思い出してしまうが、この舞台ではお呼びでない。 むしろ人類学者山口昌男の王権や道化そして祝祭を感じることができる。 猛暑の中の帰り道に今みた舞台を思い返す。 最初はメキシコと勘違いしていた。 いつものことだが私にはスペイン系とポルトガル系の違いが分からない。 そして、やはり芝居に偏った面白さが出ていたとおもう。 少数農民が多勢の軍隊と戦ったことも強調していたし・・。 ブラジル公演も意識するはずです。 いやー、暑い! *小池博史ブリッジプロジェクトOdyssey作品 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/329370 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、小池博史 ・・ 検索結果は12舞台 .

■本棚より幾つか、ー短編演劇祭ー

■構成・演出:長堀博士,出演:塩山真知子,杉村誠子,加藤翠ほか,劇団:楽園王 ■新宿眼科画廊・地下,2024.8.2-6 ■夏目漱石「夢十夜」より、宮沢賢治「よだかの星」、「風」を一日目に、「赤い靴」、「アオイハル」、岸田國士「紙風船」を二日目に観る。 全6作品です。  観客は20名でほぼ満席。 ここは初めて来たが名前のとおり劇場にはみえない。 舞台中央にある消火栓の赤ランプも付きっぱなしです。 なぜ眼科なのか?も調べていない。 役者は一人から三人が登場し朗読も入る舞台で1作が30分以内で出来ている。 暑い夏には短編が似合います。 それは心身の弛緩緊張を短時間で繰り返すことができるから。 つまり暑い夜に寝返りを多くするのと同じ理由です。 「夢十夜」は原作と古本屋での出来事の枠構造だが着物姿がどういう訳か原作と繋がっていた。 「よだかの星」は台本を一枚づつ床に散らかしていくのが巧い。 終幕には宇宙的感動が広がってきますね。 「風」は三角関係の一つの定番かもしれない。 物語に既視感があります。 「赤い靴」は不倫の話だが現代的な身振りや言葉の遣り取りが楽しい。 日本の童謡とアンデルセンの童話を終幕に結びつけたのは少し無理があるかな? 「アオイハル」は高校時代を、「紙風船」は夫婦の倦怠期を思い出させてくれる。 6作品はどれも旨味が効いていた。 うち幽霊話が4話あり夏らしさと共に人生の過去を振り返ることもできました。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/325244 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、長堀博士 ・・ 検索結果は5舞台 .

■思想8月号「鈴木忠志」

■執筆:柄谷行人,渡辺保,菅孝行,平田オリザ,中島諒人ほか ■岩波書店,2024.8発行 ■演出家鈴木忠志は「日本を捨てて<日本>に行き、そこで世界に対抗する新たな演劇を作り続けている・・」。 新たな演劇とは「劇団創設・劇場創築・俳優創生の三つを一体にした」(菅孝行)、その先にあるものです。 「演劇活動の中で一番本質なことは集団の問題につきる」(137頁)。 「演劇人にとって一番の作品は劇場である」(149頁)。 「他者からの<声=言葉>に身体を変容させるため俳優を訓練(スズキ・メソド)する」(112頁)。 舞踊家金森穣は鈴木の舞台を「・・過剰な照明、過剰な美術、過剰な戯曲、過剰な衣装、過剰な身体、加えて演出家の過剰な意志」と書いている。 私も同感です。 そこから「言葉が俳優の身体によって生きる瞬間」(159頁)がどのように舞台に出現するのか? その答を大澤真幸が論じているが哲学的すぎて理解できない。 舞台感動を言葉化するのは面倒です。 本橋哲也「鈴木忠志演劇論<序説>」は鈴木の言葉を多く挟んでいて読み易い。 序説以降をまとめて単行本にするらしい。 楽しみです。 そして「トロイアの女」を論じる頁が多いのは、これが鈴木の世界的作品であるだけではなく公演回数の多さから来ていることもある。 演劇関係の本が読み難いのはその舞台を実際に観ていないとしっくりこないからです。 書く側はそれ以上でしょう。 特集号を2024年に出したのは感慨深い。 岩波書店はいつか出さなければならなかったからです。 昨年末の吉祥寺シアターで鈴木が「来年は最後の新作を上演したい!」と話していた。 これからも多くの新作を期待しています。 *岩波書店、 https://www.iwanami.co.jp/book/b650424.html *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、鈴木忠志 ・・ 検索結果は26舞台 .