■能楽堂五月「鬼瓦」「浮舟」
*国立能楽堂五月普及公演の二舞台□を観る.
□狂言・和泉流・鬼瓦■出演:三宅右近,三宅近成
□能・観世流・浮舟(彩色)■出演:馬野正基,村山弘,三宅右矩ほか
■国立能楽堂,2026.5.9
■プレトーク「二人の男に愛された苦悶と狂乱」(梅内未華子解説)を聴く。 源氏物語最後のヒロインである浮舟と、彼女を取り巻く人間関係について語られ、「源氏物語」を中心とした内容であった。
プログラム解説には、室町時代の武士から見た源氏物語の位置づけ、能「浮舟」の作詞を行った横越元久、そして節付を担当した世阿弥についても触れられていたが、こうした能と直接結びつく裏話を、プレトークでもう少し聞きたかったところだ。
能「浮舟(うきふね)」のシテを務めた馬野正基は、私にとって初見の役者である。 声の質やリズム、謡の流れに特徴があり、プレトークの題名が示すような激しい「苦悶と狂乱」というより、全体としてさっぱりとした印象の舞台となった。
小書「彩色(さいしき)」である<イロエ>が<カケリ>の前に入り、浮舟の心の揺れを増幅していたものの、後シテの面「増」が色白で清楚な趣を湛えていたためか、舞台は落ち着いた流れを保っていた。 面は前シテの「小面」(古元休作)から後シテの「増」(是閑作)へと替わる。
狂言「鬼瓦(おにがわら)」は、当劇場で二年前にも観ている。 鬼瓦のような顔であっても、妻のもとへ早く帰りたいという夫の姿が微笑ましい。 最後を寛大な笑いで締めくくる「笑い留め」がよく効いており、今回も気持ちよく一曲を味わうことができた。