■弱法師

■作:三島由紀夫,演出:石神夏希,出演:山本実幸,八木光太郎,大道無門優也ほか
■静岡芸術劇場,2025.10.4-19
■役者を一部替えて、同じ科白で二度演じる構造が面白い。 俊徳役の山本実幸は圧倒的な演技を見せてくれた。 発声や身体の動きに無駄が無い。 作品の本質を舞台上に呼び寄せていた。 三脚の使い方も巧みだった。
スズキ・メソッドを彼女は取り入れているらしい。 SCOT以外でも採用する役者を時折みかけるが、今日はそのメソッドが自然に馴染んでいた。 これは、演出家と役者の高度なコンビネーションがあってこそ成立する方法論なのだろう。
この作品は能の形式で観ている。 役者がどこからともなく現れ、彼岸の世界を演じ、出会った父子は何事も無かったかのように寄り添って退場する。 今日はその流れが生きていた。 「ささやかな願い事はなに?」「腹が減った・・」。 救済には限りが無い。 此岸の平穏を求めるしかない。
帰りの車内で「俊徳の魂は救われたのか。反復を通じて答える」(大澤真幸)を読む。 「三島の原作の中に反復は潜在的に予定されていて、石神の演出はそれを引き出した・・」。 「ただし反復において一か所だけ大きな変更が加えられていることに気づくだろう」。 ・・? 原作は読んでいないし、今日の舞台でもその変更には気づかなかった。 二度演じる理由は何か? 実はこの問いも未決のままだ。 変更箇所を知りたい。 やはり、三島由紀夫は厄介な人だ!
*SPAC秋のシーズン2025-作品
*三島由紀夫生誕100年記念公演
*「ブログ検索🔍」に入れる語句は、石神夏希 ・・検索結果は2舞台.