■ラスト・タンゴ  ■タンゴ・レッスン

□ラスト・タンゴ
■制作:W・ヴェンダース,監督:H・クラル,出演:M・ニエベス,J・C・コペス,P・ベロン,A・グティ
■Bunkamura・ルシネマ,2016.7.9-(2015年作品)
■アルゼンチン・タンゴのマリア・ニエベスとファン・カルロス・コペスのダンサー50年のドキュメンタリー映画よ。 マリアとフアンに若きダンサー達がインタヴューをする構成なの。 それを基にダンサー達が二人の踊りを再現する。 当時の実写も同時に映し出される。 このため結構忙しい内容ね。 たっぷりと踊りを観たかったけどそうはいかない。
インタヴューは二人の愛憎関係が多い。 マリアが仕事か結婚かの判断をする場面も強調されている。 現代人にも通ずるからヒットしているのね。
ダンサーの質問「踊りに行くときは服を着替えなかったのか?」に「いつも同じ服よ」とマリアは素っ気ない。 また母がゴミを漁って骨を探しスープを作った話をする1940年後半の生活も彼女の懐かしい思い出ね。
マリアたちは貧乏だったけど貧乏人とは思っていなかった。 それは社会との繋がりや人々の関係が密だったから。 この密関係の強さが彼女の顔に表れている。 現代の貧しさとの違いをさり気なく表現するところはW・ヴェンダースの鋭さね。
*作品サイト、http://last-tango-movie.com/
□タンゴ・レッスン
■監督:S・ポッタ,出演:S・ポッタ,P・ベロン
■恵比寿ガーデンシネマ,2016.8.6-(1997年作品)
■ということでもう1本。 監督サリー・ポッター自ら出演し踊っている作品なの。 相手は「ラスト・タンゴ」に登場したパブロ・ベロン。
映画の企画が進まなくて悩んでいるサリーは偶然タンゴを観てレッスンを受ける。 そして彼女はタンゴの新作を考えようとするストーリーなの。 観客を含んだ劇中劇の逆をいく再帰的な流れよ。 しかも監督が主人公だからネスティング構造にもなっている。 音楽と踊りがリズムよく散りばめられていて流れそのものがダンス的ね。 ほぼ白黒で哀愁も帯びていて、サリーとベロンの二人は侘び寂びの愛を演じている。 さすがサリーの内面は巧く表現している。 ベロンの描き方は少し童話的だけど。 「去年マリエンバードで」の撮影場所、「パリ、テキサス」風の音楽、「雨に唄えば」の再現などオマージュが一杯。 ユダヤ教のことは分かり難かったけど、期待していた以上の作品だったわ。
*映画comサイト、https://eiga.com/movie/46635/