■トライブス

作:ニーナ・レイン,演出:熊林弘高,出演:中嶋朋子,中村美貴,田中圭
新国立劇場・小劇場,2014.1.13-26
チラシも読まないで劇場へ向かったのでストーリーに面食らいました。 聴覚障害者の弟ビリーと吃音者の兄ダニエルのいる家族の物語です。 ピアノをダイニングテーブルにするくらいですから音楽が深く関わっているのでしょう。
愛しているを手話で表現できるの? この科白の質問がよくわかりません。 愛というのは言葉以外も係わるものですから。 他の暴力的とも言えるビリーへの質問も、ひょっとして自分も同じようなことするだろうと身に詰まされながら観ていました。
前半は状況説明から抜け出せません。 問題は後半です。 突然ビリーがヘソを曲げます。 言葉の遣り取りからくる人間関係に苛立ったのでしょう。 兄ダニエルとシルビアとの三角関係も考えられますが。
次になんとダニエルの吃りが始まります。 突飛すぎます。 ダニエルとビリーの人間関係の深いところがよくみえなかったので一層の混乱です。
聴覚や吃音障害を音楽と関連させ身体化するのかと観ていましたがあてが外れました。 終幕へ行くほど音楽が遠のいてしまったからです。
舞台には言語至上主義が見え隠れしています。 ビリーはこの主義に潰されてしまいましたが、ダニエルはこれから逃げようとしたのでは? 吃りはこの主義からの逃亡です。
リップリーディングや、生まれた時からの障害か人生途中からの障害者かの違い等々、興味を持って観ることができました。 題材は面白いのですが、しかし兄弟二人は冗長表現が有り過ぎて心の深みを読み取れなかった感があります。