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■少女仮面

■作:唐十郎,演出:中野敦之,出演:椎野裕美子,津内口淑香,丸山正吾ほか,劇団唐ゼミ ■恵比寿・エコー劇場,2025.8.19-24 ■16年ぶりに行くエコー劇場を地図で探した。 場内の雰囲気も椅子の座り心地も覚えていない。 演出家も初めてか? 唐ゼミは観ていたようで観ていない。 これは好きな作品の一つだ。 機会があれば観るようにしている。 さいきんは一糸座の糸あやつり人形劇公演だった。 演出家や劇団で表層には違いが出る、でも深層ベクトルは全てが同じ方向へ向かう。 それは作者の求心力が強すぎるから。 舞台は原作に忠実にみえた。 ・・春日野八千代は演技も歌も落ち着きがあり安心できた。 ボーイも剛直だが動きに切れがあり、目力もあった。 役者たちのコンビネーションも良い。 でも「悲しき天使」は歌い過ぎだろう。 もっと絞り込んだほうがよい。 甘粕大尉はより軍人らしく、帽子は脱がないことだ。 (自慢の禿げ頭はみせなくてもよい)。 防空頭巾女は緊張溢れる演技にすると舞台全体が引き締まる。 仮面は白色系が似合うのだが・・。 いろいろ感想はあるが、それでも久しぶりに唐十郎を堪能できた。 観客は年齢が高い。 劇団が正統派に近い、つまり古典派だからだろう。 昨日は歌舞伎町へゴダール展を観に行ったが、いやー、今日の恵比寿も暑かった。 渋谷川では涼しくならない。 *原団唐ゼミ☆第33回公演 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/375108

■ナターシャ

■台本:多和田葉子,作曲:細川俊夫,指揮:大野和士,演出:クリスティアン・レート,出演:イルゼ・エーレンス,山下裕賀,クリスティアン・ミードル他 ■新国立劇場・オペラパレス,2025.8.11-17 ■彷徨う二人の主人公ナターシャとアラトがメフィストに導かれ7つの地獄巡りをする新作オペラである。 なんと現代社会こそが地獄だ!と言っている。 ・・木の無い「森林地獄」、プラスチックに囲まれた「快楽地獄」、全てを呑みこむ「洪水地獄」、金儲け一番の「ビジネス地獄」、底抜け消費「沼地獄」、世界が燃え上がる「炎上地獄」、言葉も枯れた「旱魃地獄」・・。 灰色で統一した暗い舞台のなか、電子音響や映像をふんだんに使い、楽曲は複雑で演奏は混沌として神経を不安にさせる。 歌唱も安らかにさせない。 地獄だから当たり前か? 主人公二人は未熟で為す術がない。 このため地獄が風景のように流れていく。 現代社会の表層を見つめていくだけだ。 「飽き飽きしているのでは?」。 メフィストの言葉はそのまま観客に向かってくる。 終幕、二人が行きついた地獄の果てには逆バベルの塔が!? これは理解できなかった。 塔の底まで来たからには全てを新しく創造していくしかない! こう解釈した。 聴きごたえのある歌唱は二か所、ナターシャのソロ「人間とは青い地球の化け物・・」、そして二人の終幕デュオかな。 悲観的過ぎる現代世界の描き方に賛否はあるはず。 それでも観終わったときに作品の重量感がひしひしとやってきた。 多様な方法を試みた物量作戦の成果が出ていた。  *NNTTオペラ2024シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/enjoy/record/detail/37_030096.html

■りすん

■原作:諏訪哲史,脚色:天野天街,演出:小熊ヒデジ他,出演:加藤玲那,菅沼翔也,宮璃アリ ■神奈川芸術劇場・大スタジオ,2025.8.7-10 ■客席が三方向に作られている。 5m四方の舞台はカーテンで仕切られているが中は透けてみえる。 ベッドが置いてあるようだ。 粗筋を読んでいないので何が起こるか想像できない。 カーテン越しに二人の役者が姿を現す。 大学生の兄と妹とわかる。 妹は血液系癌に罹っている? ここは病室らしい。 二人の対話が面白い。 言葉の羅列がお見事、ここに映像や照明・音響を修飾語のように被せていく。 少年王者舘を凝縮させたような舞台だ。 「りすん」とは何か? 途中でわかった。 ビートルズ「 Do You Want To Know A Secret」の歌詞は当て字がはめられていたが、この「Listen・・」から「りすん」にしたと思う。 ・・? カーテンが外され、祖母が病室にやってくる。 彼女が二人の過去を持っている。 満蒙開拓民の両親や親戚、兄妹の幼少期時代、戦争末期の混乱や父のホテルのこと、などなどが語られる。 過去を得た二人は成長した。 なかでも父が経営していたホテルが何度も話題になる。 ホテルは兄妹の永遠のオアシスかもしれない。 後半に入り隣室の患者に目が向けられる。 その人は小説家? 兄妹の行動を小説にしようとしている? ここから文学論的な話になる。 演劇論も重なるので楽しい。 でもこれを続けると舞台が逸れてしまう。 それより、時々思い出させる病室という雰囲気である。 妹の死へ向かう気配といっていよい。 これを兄妹の饒舌な対話が撥ねつけていた。 でもついにその時がやってきた? 二人がダンスをしながら幕が下りる。 ここぞという時にダンスを入れるのは勇気がいる、天野天街ならいつもの事だが。 このダンスが生と死を昇華した。 雑音のない終わり方で上手くまとめたと思う。 役者たちも舞台装置も一体感があり、ツアー公演だが完璧な舞台を観せてくれた。 暑い中、久しぶりの横浜を楽しめた。 *「りすん2025edition」リ・クリエイションツアー *劇場、 https://www.kaat.jp/d/lisun *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、小熊ヒデジ ・・ 検索結果は2舞台 . *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、天野天街 ・・ 検...

■能楽堂八月「海老救川」「朝比奈」「水汲」「砧」

*国立能楽堂八月企画公演の□4舞台を観る. □小舞・和泉流・海老救川■出演:野村太一郎ほか  □狂言語・和泉流・朝比奈■出演:野村万作 □小謡・和泉流・水汲■出演:野村萬斎,野村裕基 □袴能・観世流・砧■出演:観世恭秀,坂口貴信,福王茂十郎ほか ■国立能楽堂,2025.8.6 ■本日の夏企画は「素の魅力」。 素は涼しい。 小舞「海老救川(えびすくいがわ)」、狂言語「朝比奈(あさひな)」そして小謡「水汲(みずくみ)」と続く。 野村家の芸を堪能した。 若人も育っている。 休憩をはさんで袴能「砧(きぬた)」が演じられた。 観客はいつもと違う。 老若男女が程よく分かれていた。 和服も多い。 「砧」は好きな作品である。 でも袴能のため最初は戸惑った。 次第に慣れる。 とはいうものの、今日も暑かった。 「650年続く能楽一家」を先日のテレビで見る。 観世宗家観世清和と嫡男三郎太が登場し箱入りや能舞台を紹介していた。 普段見ることができない内容で楽しめた。 はたして、本日の舞台にも両人は出演していた。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2025/7019/