■橋からの眺め

■作:アーサー・ミラー,演出:イヴォ・ヴァン・ホーヴェ,出演:マーク・ストロング
■東宝シネマズ六本木,2016.4.8-13(NT,2015年収録)
■ホラー染みた芝居に感心してしまった。 叔父エディは溺愛する姪キャサリンを手放したくない。 子供の結婚にいちゃもんをつける親と同じである。 エディが中途半端でないところが恐ろしい。
ニューヨーク港湾で働くエディの家に故郷シシリアの親族が不法移民として仕事を求めてやって来る。 その中のロドルフォを好きになるキャサリンだが・・。
当時の移民の立場がエディをこのような頑なな態度にしているのかと観ていたがそれだけでもない。 やはりエディ自身の人生観から来ているようだ。 でもその源泉は語られない。 オモシロイようで要がツマラナイのは延々と続いている親子史が変われないからだろう。
幕前に美術担当が自慢していた舞台は周囲に長椅子が置いてあるだけのシンプルな構成だが物語をしっかりと受けとめていた。 シャワーの水と血の使い分けも巧い。 背景に流れていた音楽も同様である。 そして点景としてのコーヒーやバナナの匂いなど湾岸の仕事の様子が触覚をともなって語られる。 シシリアで食扶持を得るための仕事も聞き耳を立ててしまう具体力があった。 ト書きとしての弁護士の最後の一言が、エディも探せばどこにでもいる人間なんだと妙に落ち着かせる。
舞台の総合力が2015年ローレンス・オリヴィエ賞でリバイバル賞、最優秀演出賞、最優秀主演男優賞をもたらしたのだろう。 観終ってどういうわけか「カラマーゾフの兄弟」を読んだ時の感覚を思い出してしまった。
*NTLナショナル・シアター・ライヴ作品
*映画com、https://eiga.com/movie/82981/